02-03-03 漢一 高帝劉邦 3
前 201 年、
「天子は国内各地を巡察して回るものです。陛下は
この命令が発せられると、韓信も陳にやって来、面会した。そこで
「なるほど、人の言っていた通りだ。狡兎死して走狗烹らる。飛鳥尽きて良弓藏わる。敵国破れ謀臣亡ぶ。天下既に定むらば臣はもとより釜ゆでとなる定めだったのだ」
韓信は手枷足枷首かせをはめられ投獄されたが、やがて赦免を受ける。ただし
かつて劉邦は韓信と語り合ったことがあった。
「わしの将器はいかほどかな?」
「十万を率いるのがギリギリでしょう」
「では、そなたは?」
「私は、多ければ、多いほど」
はは、と劉邦が笑う。
「では何故わしに捕らえられたのだ」
「陛下は兵を率いるお方でなく、将をお統べになるお方。だからこそ私は囚われました。そのお力は天与のものであり、人にどうこうできるものでもございませぬ」
大功臣についての封爵はある程度終わったが、それ以下は皆が様々に功を主張するのでなかなか論功行賞を進めきれずにいた。あるとき劉邦が宮殿のバルコニーから庭を見ると、諸侯らがあちこちで砂の上に座り、何かを話している。あれは何をしているのかと
「陛下はみなの力を得て天下を平定されました。しかしいま領土を与えられたのは陛下の昔なじみや親しきものであります。誅殺されたものは陛下が憎しみや恨みをお覚えになったものであります。かのものらの謀議は、謀反。このままでは功績に応じた封爵地を得られない、どころが、陛下よりいつ過去をまさぐられ、殺されるとも限らない、と不安に思っているためです」
「ど、どうすればよい?」
「陛下が日頃から憎んでいることが周知のこととなっている者はおりますか?」
「
「では真っ先に雍齒を封爵なさいませ」
張良の提案はすぐに実行され、合わせて丞相以下の官僚を急かし、封爵を進めさせた。群臣としても「あの雍齒ですら諸侯となれたのだ」と、自らの封爵への不安を抱かないようになった。
丁公は項羽に仕えていた将。劉邦とも旧知の仲であった。ある戦争において劉邦を追い詰めたのだが、旧知の仲であることを理由に見逃した。のちに劉邦に帰順。命を助けた恩をもとに褒美をもらえると出向いたところ「お前のせいで項羽は敗北した。お前のような不忠者を飼えば何が起こるかわからぬ」と殺された。
雍齒は劉邦に対し従反常ならぬ振る舞いをしており、殺したいほど憎まれていた。しかし論功行賞において、誰よりも先に諸侯につけられた。これによって臣下らは劉邦が公正な論功行賞をなすのだと安心した。
劉邦の人事の妙が光りすぎる。
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