「名前がある、ということを愛する」という感覚から、「名前のないそれもある」という事実を突きつけられたときの落胆。その感覚はそれだけでも文学的なものなのですが、この物語はそこで終わらない。それが「目覚め」として機能し、主人公に淡い心理的な成長をもたらす。掌編の掌編らしさが、いい切れ味を出していると思います。