第12話
中田のアパートの先にあるパチンコ店に着くと、虹はまた僕から遠ざかり、酒屋にその片足を降ろしていた。
僕は酒屋の隣にある公園のブランコに腰掛けた。虹は酒屋の奥の林に逃げ込んでいた。
もう虹を捕まえなくてもいいような気がしてきた。自分の物にしたところで、虹が僕の前で美しく、大人しく横にいてくれるかどうかわからない。角と牙を身につけて、おまけにナイフを持って、僕に襲いかかってくるかもしれない。
虹を見るのをやめた。
まだ濡れているブランコからジャージに滲みてくる水は気にならなかった。空に浮かぶ雲を映した水たまりを泳ぐアメンボを観察して、空飛ぶアメンボを想像した。
もう一度空を見上げたときには、西の空は赤く染まっていた。
東の空に虹はなかった。醜態を晒すことなく、その余韻を茜色の空に引き継いで、極めて静かに虹は消えていった。
そろそろ秋だ。
僕が彼女を嫌いにならないためにも、できるだけ早くカヨコと別れようと思った。 (了)
金沢は僕のことを知らない @zhong_cun
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