第7話
「あの虹を捕まえに行くの」
また兄ちゃんの言葉を思い出した。本当に虹は捕まえられないのだろうか。
大学生になって、それまで自分の中にあった先入観や自信や常識を疑っていた。大人たちから教わったことの全てが正しい訳ではないことに、気付き始めていた。
今まで一度もやってみたことが無いのにそれを常識として決めつけていた自分を疑って、やってみて実際にできなかった時に初めて諦めよう。
虹を追いかける。虫取り網は持っていないけど、原付を持っている僕はあの時の先輩よりもずっと有利なはずだ。
浅野川を渡る前に、もう一度原付を止めた。虹の右端は霞んでいたが、間違いなく若松橋の向こうの喫茶店の跡地に降りていた。
喫茶店の入り口には、真実の口のレプリカが間抜けな表情で座っている。伸び放題のセイタカアワダチソウの向こうに、エンタシス様の柱が横たわっている。いつだったか、この店にきたことがあった。
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