第4話 心を開けば見えてくるもの。
女神様に教会でお会いして、聖獣の事やチート能力の説明を受けるまで、何だかんだと親子関係などの説明回が続きます(*- -)(*_ _)ペコリ
ダラダラとした展開になりますが、もうしばらくお付き合い頂けますと嬉しいです。
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大きな窓からは朝日が降り注ぎ、清々しい朝の空気に満ちた食堂。
七歳とは思えないマナースキルを得た私は、優雅な手付きでカトラリーを動かしながら食事を口に運ぶ。
長方形の食卓はとても長く広い。
食堂自体がとても広いので、この大きさでも狭さは一切感じない。
むしろもう少し大きなテーブルでも問題ないだろう。
正面には一度見たら忘れられない聖母のような美しい美貌の母。その清廉で穢れのない美しさ通りに内面も素晴らしい女性である。
父に極上の甘い愛をもって溺愛され、元々の美しさが年々磨きがかかっているらしい。
左側の上座にはそんな母と娘を溺愛中の父。
大天使ミカエル様? とでも呼びかけたくなるような神々しい美貌は、男女問わず信奉者が居るらしく夜会の度に秋波が酷いらしいが、父は母一筋なので全て完璧にスルーされているらしい。
情報元は、公爵家の筆頭執事のチャールズの息子で執事教育を受けているゼクスである。
年の差が八歳もあるというのに、何故か私を同い年のように扱ってくる変わった男の子だ。
訊いてもいない情報をぺらぺらと話してくるので、記憶が蘇る前の私はたまに鬱陶しかったのだが、今は有難い存在だ。
それはさておき、朝食をそろそろ食べ終えそうな所。
教会に行きたいなら今が切り出すチャンスだと私は口を開いた。
「お父様、お母様、わたくし、教会に行きたいのですが。お時間が取れますでしょうか?」
丁寧な言葉を使い尋ねる。
明日行こう!と決意を固めてはいたけれど、直接お父様に話す段階になってそれは酷く我儘な気がして、お父様の予定のお伺いを立ててからにすることに変えたのだった。
本当は今日直ぐ行きたいけれど、公爵家という非常に忙しそうな身分、予定が直ぐに空くというのはなさそうだし、我儘を言うつもりはない。
「シア、シアの為なら私達は幾らでも時間を作る。教会は今日行こう。行きたいのだろう? それに、畏まった口調は家族の時間ではしない事に決めたのを忘れたのかい?シアが毎日熱心に学んでいる事は知っているよ。
日頃から丁寧な口調を心がけて淑女らしくあろうと努力しているのも。
それは、咄嗟に砕けた口調になる事を心配しているのだろう?」
「はい…お父様たちにご迷惑をおかけしたくないのです。」
全て見通されていたのだ。少しシュンとなる。
「少しばかり失敗したっていいさ。
それに、失敗するなら幼いうちの方がいい。初めから完璧な者など居ないと勉強不足として容赦して貰える筈だ。
勿論、どんな事があろうとも、私の最愛の娘であり、家族なんだからいくらでも私が守る。当たり前の事だ。
そんな事よりも、昨日七歳になったばかりの幼く可愛い娘が、既に他人行儀な口調で親に話す事の方が辛い。」
「……お父様。」
優しい声で語られる言葉たち、胸の奥が温かくなる。
公爵家の名を背負う責務を理解しろと厳しく躾けるのではなく、今はまだ甘えて欲しいと微笑んで貰えるなんて。
もし、それで何か失敗があったとしてもいくらでも守ってくれると言ってくれた。
勿論、お父様がそう言ってくれる言葉に甘えるつもりはないのだけれど。
こんなに大切にしてくれる両親の足を引っ張る事など、増々したくなくなったのだから。
けれど――――
甘えてもいいんだ。
何の見返りなど求められない無条件で愛される関係は何て幸福を感じられる事か。
――――ダッテ、マエノセカイデハ、イモウトバカリ…
嫌な記憶が蘇りそうになって目を閉じる。
お父様の言葉に対する私の返答を待たせているというのに、両親はどう急かす事もない。ただ見守ってくれている。
そうか、それもそうだ。七歳で記憶が蘇るまでの私は公爵家の名を名乗る者として恥ずかしくないように、親に失望される事を酷く恐れていた。
そんな親ではないと分かっているのに、こうあろうと決めた理想像に幼いながらに固執していたのだ。記憶が蘇った今、理想像に固執する気持ちは何故かフッと消えて無くなってしまった。
そうすると両親の私への愛を実感できるようになった。
愛される為に常にもっともっとと成果を求め続けるのではなくて、
ただ私というだけで愛されていたのだと気付く事が出来たのだと思う。
少しばかり肩の力を抜いて父や母に甘えよう。それが二人の望みでもあるのだ、何を遠慮しようとしているのだろう、素直になる事が親孝行ではないか。
「はい…、あ、うん。分かった。」
じゃあいきなり口調を砕けて…とは勿論いかず、久しぶりに使った子供っぽい砕けた口調は、少したどたどしい。
それでも父は微笑み、母も嬉しそうな顔をする。
(こんなことで喜んでくれるんだなぁ、今の両親は。本当に優しい人達だ)
「では朝食後、早急に済ませないといけない案件だけ片付けたら、昼食前には屋敷を出よう。昼食は外で食べるのも楽しそうだ。」
「…! いいの? 楽しそう!」
パァッと表情が明るくなる。
「うふふ、それはステキだわ。是非外で食べましょうね。」
母がニッコリと微笑み後押ししてくれた。
「はい!」
嬉しくて思わず大きな声で返事をしてしまい、慌てて小さな両手で口を塞ぐ。
そんな私に両親はニコニコと幸せそうに笑うばかり。
(これが何をしても赦される…ってやつなのかしら。)
女神様の言葉を何となく思い出したのだった。
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