第363話 過程と結果のジレンマ

 人間には大きく分けて二種類の人間がいる。

それは過程を重んずる人と、結果こそが大切だという

人間の人生におけるジレンマだ。


私は過程を重んじて生きてきた。そして父親は結果こそ全てだという人間だった。


相反するものでは無いが、かなり近しいものであることは確かだ。わ

簡単に言えば、童話の「うさぎとかめ」を指す。


結果を重んずる人は、人間関係において、信頼というものが、無いに近いほどの人間が多い。それは結果を優先する為、人間関係において、利害関係が生ずるものだと考えている。それ故、多くの資産を持っている人は、人間不信に落ちやすい。利害が成立してこそ成功してきた事が多いからでもある。


私は結果は正直、それほど重くは見てはいない。だからと言って結果もしっかり出す。過程を重んじるという事は、人間として一貫性があると言うことを意味する。つまりは利害関係に左右されず、我が道を行くからだ。道中で寄り道をしていくが、それが全く意味の無い事で、終わる事は少ない。この人間の世界にいて、無駄な事など無い。必ずどこかに繋がっていると私は思っている。だからこそ、自信のある事は幾つか複数ある。


結果だけを大切にする人は、私の人生において逆から見ると、冷徹な思想を持つ人が多く、友人はいたとしても極々少数になる。それは我が道を行くからであるが、過程を重んじる人の、我が道とは全く別物である。


日本を見れば分かると思うが、いい時期もあれば悪い時期もある。しかし、日本のような島国では、元々閉鎖的な思想を持っている為、良い精神、つまりは一貫性のある侍のような魂はもう、限りなく小さな灯でしか無い。時代の流れと共にそれらは消えかけていて、非常に多くの問題が、既に解決出来ない状況まで来ている。


おそらく世界で一番、戦争に対して、理解していない国である事は間違いない。

しかし、そのような子供たちにしてしまったのは、大人である。しっかりとした大切な事を教えず、中途半端な教育のせいで、語学でもそうだが、一カ国語しか話せないのは、世界でも日本だけであろう。経済は安定している時には、それほど問題が出る事も無い。しかし、そんな時代はとっくに日本では議題にも上がらないほど愚かな政治のせいでもある。


昔から土木業者と政治家の関係は変わる事なく、ここまで来てしまった。真の愛国者は数名はいる。だが数名では変えられないのが、今の日本である。しかし、本当に奈落の底に堕ちる時になって、ようやく重い腰を上げようとするだろうが、今回ばかりは、手遅れだと私は思っている。


子供に対して、どんな教育をすれば、将来の夢の第一位が「会社員」になるのか、私には理解できない。夢とはそんなものじゃない。大人たちはそんな簡単な事すらも分からず、どんな教育をすればそうなるのか聞きたい。


それだけ子供たちは不安がっている。母子家庭や、家庭内でもあまり良く無い環境であることがこの「会社員」という安定したという安易な答えに行きついている。大人である以上、多少の事は知らなければ、歳を取っただけの子供に過ぎない。夢は人生において無ければいけないものである。


そこに独創的な思想が生まれ、独自の考えにそって子供は成長していく。道を教えるのではなく、どのような事がしたいのか? 興味がある事は何か? 人生を生きていく上で、夢とは叶わずとも、そこまで頑張って行く事によって、過程として人間を成長させる。つまりは今の大人は、どうしようもない大人が、多いという事になる。


多くを知る私でも、それなりの自信はあるが、決して最終地点があるとは思ってはいない。まだまだ知らない事も多いし、まだまだ人間として成長したいという思いで生きている。新しい事を知り、偶然、自分の知っている事と繋がりを見せる事も多い。それは過程を大事にして、生きて来たからである。挑戦する以上、当然結果も出す気持ちは忘れてはいけない。だが、倒れている人がいれば助けるように、己の時間を割いて、人を助けるのも大切な事である。


私の父親は結果だけしか見なかった。だから友人と呼べる人は、幼馴染の人だけだった。そして、私に対して酷い仕打ちをした。医者であり、肩書に弱い人からすれば成功者と思うだろうが、それは安易すぎる。


人生とはそんな単純なものでは決して無い。ジレンマに苦しみ、選択をしなければならない時も来るだろう。大きな壁も幾つも越えてこそ、その意味を知ることが出来る。人生とは複雑極まりない。だから若い時には色々挑戦する事が大切なのだ。

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