15日目 おやつ
付喪神はおやつを食べない。おやつどころか、なにも食べない。当たり前だけど、それじゃあどうやってエネルギーを得ているのだろう、と思う。
「霞を食って生きているのよ」
おじいちゃんは笑い、私がお菓子を口に運ぶのを目を細めて眺めている。なにを言ってるんだか、と紙飛行機がげらげら笑っているところを見ると、これは付喪神ジョークなのだろうか。人間にはさっぱり分からないけど。
「わしらは人間に使われ思われることで意志を持つ。その思いを消費しきったら、まあ、また使ってもらうか、待つしかない」
「秋はいいぞ。どういうわけか人間は、春や夏よりも秋はゆっくり時間を使おうとするからな。秋の夜長にノスタルジーを感じるのか?」
のすたるじーとはなんだ、と問われた紙飛行機が説明しづらそうに困っている。私を見ても困る。私だって日本語でノスタルジーを説明するのは難しい。
秋は短い。秋は夜が長くなる。あっという間に色づき、そして散っていく広葉樹。なるほど、夏が子供時代を思わせるような懐かしさなら、秋にはこれから年をとっていく自分や年月が降り積もったなにかを思わせるような哀愁がある。
「よく分からんが、確かに、あんてぃーくしょっぷにいたころも秋はよく売れた。新しい場所に行って新しく使われるのは嬉しかったのう」
おじいちゃんらしいざっくりとした納得の仕方に今度は私が目を細める。
「秋がおいしいのは、人間も付喪神も同じだね」
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