5日目 秋灯
古い鍵と紙飛行機の形をした付喪神と暮らし始めて数日経つ。
おじいちゃんの首元(?)には、蝶ネクタイのような青いリボンが付いている。たぶん、きっと、おそらく、フリーマーケットで買った時栞の紐として付けてもらったリボンだと思うのだけど、どういう変換の末そういう姿になっているのかは謎に包まれている。
私が鞄からおじいちゃんを外すと、ぱっとリボンは小さくなって、にょきにょきと手足が伸び動き出す。紙飛行機は、おじいちゃんが動き始めた途端口やかましく悪態をつき始める。尖った鼻先と同じように彼の言葉はきつい。
一人で暮らすことに特に問題を感じていた訳ではなかった。私は一人で過ごすことが好きだし、一人を楽しむことも得意だ。
けれどごくたまに、誰かの家に遊びに行ったとき、あるいは夜道をとぼとぼ帰りながら、よそのおうちの人感センサーが反応してぱっとライトがついたとき、なんとなく寂しくなることもあった。
おじいちゃんは電気をつけてくれない。紙飛行機は好き勝手ばかり言っておかえりの一言もない。
だけど彼らの賑やかさは、暗く寒くなる下り道をおりていくような秋の夜に、ぽっとあかりが灯ったような気もした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます