5日目 秋灯

 古い鍵と紙飛行機の形をした付喪神と暮らし始めて数日経つ。

 おじいちゃんの首元(?)には、蝶ネクタイのような青いリボンが付いている。たぶん、きっと、おそらく、フリーマーケットで買った時栞の紐として付けてもらったリボンだと思うのだけど、どういう変換の末そういう姿になっているのかは謎に包まれている。

 私が鞄からおじいちゃんを外すと、ぱっとリボンは小さくなって、にょきにょきと手足が伸び動き出す。紙飛行機は、おじいちゃんが動き始めた途端口やかましく悪態をつき始める。尖った鼻先と同じように彼の言葉はきつい。

 一人で暮らすことに特に問題を感じていた訳ではなかった。私は一人で過ごすことが好きだし、一人を楽しむことも得意だ。

 けれどごくたまに、誰かの家に遊びに行ったとき、あるいは夜道をとぼとぼ帰りながら、よそのおうちの人感センサーが反応してぱっとライトがついたとき、なんとなく寂しくなることもあった。

 おじいちゃんは電気をつけてくれない。紙飛行機は好き勝手ばかり言っておかえりの一言もない。

 だけど彼らの賑やかさは、暗く寒くなる下り道をおりていくような秋の夜に、ぽっとあかりが灯ったような気もした。

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