からりと
部族はどうなったのか、という疑問を遮るように、青年はトレードを持ちかけた。これらの仮面と、あなたの国の資料を交換してくれないかと。
青年が指し示す仮面の中には、口のない仮面も含まれていた。こんなに特徴的な仮面を、一体誰がどんな場面で使用していたのか。いくら疑問をぶつけても、青年はにこにこと笑うばかりだった。
資料収集という目的がある以上、申し出を断るという選択肢はない。すぐ戻ると言い残し、私は博物館を出た。からりとした風が皮膚の水分を奪っていく。日本の十一月を思わせる気候だが、心地よさは全く感じられない。私は帽子を被り直すと、だらだら坂を下っていった。
宿の電話が外線なことは、到着時に確認済みだった。暇そうにしている宿の主人に声をかける。外国人が少ないタニオリ島で、国際電話はめったに使われないのだろう。宿の主人は少し目を見開いてから、ストップウォッチを持ってきた。準備はいいか、と目で尋ねてくる。スタートの合図と共に、私は世界博覧会事務局の番号を押した。
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