かぼちゃ

 豪快に割られたかぼちゃが道端で蒸されている。ちょっかいをかける子供を追っ払いながら、調理人はふたを開けた。かぼちゃの煮物とは明らかに異なる、どこか青臭いような匂い。待ち構えていた老若男女が、我先にとかぼちゃを手に取る。

 タニオリ島の人々は、蒸しかぼちゃをおやつ代わりに食べているらしい。甘味が不足しているタニオリ島では、これで十分甘さを感じるのだと。私は蒸しかぼちゃの熱さに四苦八苦しながら、調理人に話を聞いていた。

 食べないのか、と問われて、私は半分に割られたかぼちゃを持ち直す。現地の食べ方に倣って、思いっきりかぶりついた。熱さと共に、野性的な甘みが舌に届く。調味料を何もかけていないせいか、素材本来の味がよく伝わる。

 気づくと、周りの人々がニヤニヤしながらこちらを見ていた。もう一個食べるか、という調理人の厚意を、断腸の思いで断る。そろそろ村外れの博物館に行かなければならない。書きとめた蒸しかぼちゃのレシピを手に、私は立ち上がった。人生で初めてのフィールドワークは、まだ始まったばかりだ。

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