かぼちゃ
豪快に割られたかぼちゃが道端で蒸されている。ちょっかいをかける子供を追っ払いながら、調理人はふたを開けた。かぼちゃの煮物とは明らかに異なる、どこか青臭いような匂い。待ち構えていた老若男女が、我先にとかぼちゃを手に取る。
タニオリ島の人々は、蒸しかぼちゃをおやつ代わりに食べているらしい。甘味が不足しているタニオリ島では、これで十分甘さを感じるのだと。私は蒸しかぼちゃの熱さに四苦八苦しながら、調理人に話を聞いていた。
食べないのか、と問われて、私は半分に割られたかぼちゃを持ち直す。現地の食べ方に倣って、思いっきりかぶりついた。熱さと共に、野性的な甘みが舌に届く。調味料を何もかけていないせいか、素材本来の味がよく伝わる。
気づくと、周りの人々がニヤニヤしながらこちらを見ていた。もう一個食べるか、という調理人の厚意を、断腸の思いで断る。そろそろ村外れの博物館に行かなければならない。書きとめた蒸しかぼちゃのレシピを手に、私は立ち上がった。人生で初めてのフィールドワークは、まだ始まったばかりだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます