プレゼントが被った………
落ち込んでいるシオンを慰めようと、シオンの兄達はそれぞれ、喜びそうな品物を求めて一部の私兵を連れて旅立った。
長男のルークはバーニングハート領地の北側にある魔物の森へ出掛けた。
次男のレインは、南に海に面しているので海へ宝石類を探しに向かった。
公爵家では魔物の森や、海からの貿易の為に、私設騎士団を持つことが許されていた。
「「シオンの為にがんばるぞ!」」
二週間もの間、二人は留守にしていたがほぼ同時に帰ってきた。
「シオン!今帰ったよ!」
「ルークお兄様!?今までどこに行っていたんですか!心配していたんですよ!」
ルークは魔物の森の深層で見つけた『卵』をシオンに渡した。
「ごめん。シオンにプレゼントしようと龍種を探していたんだけど見付からなくて、巣にあった卵を採ってきたんだ。どうだい?珍しいだろう?」
「ルークお兄様………」
ジーン…………
シオンはルークに抱きついた。
「ありがとうございます。とっても嬉しいです。でも、私の為に危険なマネはしないでください。ルークお兄様が怪我をすると悲しいです」
「し、シオン!?」
シオンは良いことを言っていたが、ルークは最愛の妹に抱き付かれてそれどころでは無かった。
『どどどっ、どうしよう!?ここまで喜ばれるとは思ってなかったよ!』
ルークは顔を真っ赤にしながら思考停止していた。そこへ──
「おい!こんな入口で何していやがる!」
ちょうど戻ってきたレインがルークを突き飛ばした。
「ぐはっ!?………何しやがる!」
「ルークこそ!シオンにナニしてやがった!」
突然の事にオロオロしていたシオンが我に返り、レインに言った。
「レインお兄様もお帰りなさい。二人ともなかなか帰ってこないから心配していたんですよ?」
レインの両手を握っていった。
「えっあ………心配させてごめんね?スキルの儀式から帰ったシオンが落ち込んでいたから、喜んで貰おうとプレゼントを探してきたんだ」
レインは後ろにいた従者を呼んだ。
「海で真珠を探していたんだけど、『運良く』海龍の巣を見つけてね。海龍は居なかったけど、巣に卵があったから持ってきたよ。珍しいでしょう?」
「れ、レインお兄様、海の中をどうやって?」
「うん?沖合いまで船で行って、賢者の魔法で、水中でも息ができる『魔法の泡』で周りを囲って潜ったんだよ」
流石は賢者のスキルは伊達じゃないね。
「くははははっ、レインよ少し遅かったな?龍の卵は俺が先にプレゼントした所だぞ?」
「なに!?」
レインは側にあった卵を見て驚いた。
「ば、バカな!?アホなルークと同じとは………」
膝をついて悔しがるレインをみてシオンはフォローした。
「いえ、流石はお兄様達です。お二人とも兄弟ですね。二人のプレゼント、とっても気に入りましたわ!」
シオンに言われてようやく立ち直ったレインが言った。
「ありがとうシオン。シオンも変なスキルだからって落ち込まないでね?大切なシオンは僕が守るから」
「ありがとうございます」
「俺も!俺も守るからな!」
「ルークお兄様もありがとうございます」
そこにフィーネがやってきた。
「うわっ!?なにこれ?卵焼き何人分できるかな?」
「ちょっと、せっかくのプレゼントを食べないでよ?」
あはははっと、嬉しい笑いが公爵家を包んだ。
「あっ、でもこの卵、2つとも病気みたいよ?卵の下側の色が変色しているわ」
「本当だ。ちょうど良かった!フィーネに言われて練習していた回復魔法を使ってみよう」
シオン達は玄関から移動して応接室へと移動した。
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