第3話 テディ
「はじめまして、ボクはテディ」
優しく、まるで子供に話しかける声色で人形は名乗った。
テディというなんの変哲もない名前だけど、今は人形が喋って動いていて、まったくもって不思議なことが起きている。これを変哲ないことだと言えるだろうか。
赤子はテディを抱きしめ顔を埋める。
テディは自分が人形だと気づいているのか、赤子に抱きしめられても抵抗せず、むしろ受け入れていた。よほど気に入ったのだろう。
ふわっとした質感と、まだ新しい布製に懐かしさと疑心を感じた。
俺は驚けばいいのか、今起きているこのことを受け入れればいいのか分からなかった。
「そうだ、君のお母さんはどこにいるの?」
途端に赤子はキョトンとし、目を丸くする。テディを助けるのに夢中で、母親がどこにいるのか気にしていなかったのだろう。
そうえばと思い出し、俺もさきほど通った部屋中を思い出した。
どうして人の気配すら感じないのだろう、とはいえ彼らは俺のことが見えるようだ。
なにか聞きたいことがあったのだが、どうしても思い出せず、口に出すことはなかった。
「じゃあ、一緒に探しに行こう」
テディはそう言って、俺の腕の裾を引っ張り、地下室への道へと案内した。相変わらず赤子はテディを抱えたままだった。
✤✤✤
「とても暗いね…そうえば、君の名前はなんて言うの?」
思い出したように、テディが問いかけた。
赤子のことかと思ったが、テディの目線の先には俺が映っている。
名前、名前だと?
そうえば、俺の名前はなんだったっけ
なにか胸の内に引っかかり、必死に思い出そうとするも、次の言葉によってそれは遮られた。
「ここ、お母さんの部屋じゃないかな?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます