第4話


「おいそこ! あと1分だぞ」


校門に立っていた男性に言われる。周りには誰もいないためかよりいっそう不安にさせる声だった。


ギリギリか。まぁ大丈夫だな。


しかし遅刻した訳ではない。俺の目的はぎりぎりに到着することなのだから。


そう心に言い聞かせ校門を走り、教室に向かった。


「はい、ぎりぎりセーフ」


教室についた俺は真っ先に席に座るとチャイムがなった。


息をきらしながらもギリギリに到着したため

周りからの視線が感じられるが気にはならない。


まぁ今は自分のことじゃなく転校生ことしか頭にはないけど。


あ、楓は遅刻したんかな?

そう思うと楓の席に視線を向けた。向けるとそこには息をきらしてもいない楓が見える。


まじか。あそこから走って余裕かよ……。

遅刻しそうな時、俺に合わせてくれていたのか……。


少し女子に合わされていたことにショックを受けながら、本を読むフリを続けた。







「それじゃあ。みんなに言っていた転校生の紹介ね」


先生の声が教室に響く。

みんなも理解しているのだろう。周りも落ち着いた様子だ。


俺からしたら、転校生の期待と言うより気になることが多すぎる。ってか期待も何も転校生と今朝あったからな。



「さぁ、出てきていいですよ」


そう言うと転校生が出てきた。


転校生の姿は先ほどより落ち着いた様子である。しかしその一方で周りはにぎやかになっていた。


その声の一部には『美人』という声が目立った。


それもそうだ。

高い鼻に白い肌、さらさらした髪。誰からも美人と言うだろう。


ほんと今考えてもありえない。お嬢様が俺を気に入る理由。

あれからいくら考えてもやはり俺には腑に落ちない。


「それではお名前をお願いします」

「はい。わかりました」

「葉月美麗です。よろしくお願いします」


そう言うと拍手が鳴り響く。


「それじゃあ。質問ある人はいますか?」


そう言うと大勢の人が手を上げ盛り上がりながらホームルームがすぎた。



「おーい」


楓が俺の席に向かって歩いてくる。


「ん? なんだ楓?」

「いや朝は間に合った?」

「いや見たらわかるでしょ。ギリギリすぎたよ」

「うーんそうだね。私の方が普通なら遅くつくはずなのにね!?」

「……うるさいな。そこそこ心に響くぞ。その言葉!」


そう他愛もない話が続く。


いつも通りの朝であり、いつも通りの会話だ。ホントは他にもよく話すメンバーがいるんだが、転校生を見にいっているためいない。


そう思ってると足音が聞こえてきた。

振り返ると──

葉月美麗が姿を見せた。


「少しいいかな?」








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