第3話


「……へ?」


 嘘だろ…? 

 まずこの人と俺って繋がりないよな? それなのにいきなり何を言ってんだ?


「……あの、あなたは誰なんですか?」

「私? 葉月美麗。美麗って言ってもらえばありがたいわ」

「……そういうわけで言ってるんじゃないですよ」

「あらそれじゃあどんな意味なのかしら? 蒼くん、」          


 ……なんだと? 何故俺の名前まで知ってんだよ?

 やばい、頭がパニック状態になりつつある……。 


「今ので話したいことが増えましたよ」

「あら、私、なんかおっしゃいました?」


 まるでわかっているような口ぶりでわざとらしく話す。


「……まあいいです。それより何故あなたの家に住まわなければいけないんですか?」

「あなたが気に入ったの」


 あなたが気に入った? 初対面のはずなのにか?

 車から出てきたときだって俺の顔はまだ見られていなかったはずだ。

 しかし知られているということは、……事前に俺を知っていたということしか考えられない。


「でもあなたは私のこと知っていないはずだわ。私だって写真でしか見たことないわよ」

「写真?」

「話は変わるけど、あなたの学校に転校生がくること知っているかしら?」

「はい知ってます。それと関係があるんですか?」

「その転校生は私のことなのよ」


 その言葉を知った瞬間、脳裏に楓の声が流れてきた。

 まさかこれが楓の言っていたお嬢様ってやつなのか?


「転校してくる前にこの学校の人の写真を見せてもらっているわけよ」


 なるほど。ようやく少し話が見えてきたぞ。

 要するに、転校生のお嬢様が事前に見た学校の写真で俺を知ったということか。


 だがそれだとしてもだ。

 俺に住み込みを言うのとは少し話がズレている気が……。


「だとしても、普通、初対面の人にそんなこと言いますか?」

「あらすみません、私あまり社会常識みたいの知らないのよ」


 確かに話の内容的にほとんど理解したが、モヤッとした感じがどうしても抜けない。


 まぁ。そういうもん……なのか。


「まぁ。この話は一旦ここで、終わらせましょう。時間的に両方やばいですので」


 あっ。完全に忘れていたぞ!?

 やべぇ早くいかねぇと!?


「そうですね! それでは!」


 そう言うと全力脱出で走った。





 

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