第16話 キヨニャン

 綺夜羅は学校に行きながら家のバイク屋を手伝っている。


 綺夜羅の家は母親がいない。綺夜羅がまだ小学生の時に離婚し母の方が出ていった。

 母親は綺夜羅を連れていくつもりだったが綺夜羅は父と残ることを選んだ。

 母のことがもちろん大好きだったが、1人残される父のことを心配したのだ。


 それから綺夜羅は家事をこなし、その上で父の手伝いをした。

 今ではもう1からバイクを作ることや直すことも1人で一人前にできる。


 そして明るく人から愛されるキャラの綺夜羅はバイク屋の経営を立派に助けていた。


 金髪ポニーテールのヤンキー少女だが毎日父の為にご飯を作り、その上店まで手伝ってくれ本当に孝行娘だ。


 ベテランの綺夜羅は仕事の具合を見て自分の時間も上手く作っているが今は咲薇の愛猫のカナを預かっているので尚暇はなく忙しい。


 家にいる時は小さくて可愛いカナにずーっとデレデレしている。

 今の彼女には何か事件が飛び込んでくるような隙もないのだ。


 父親のご飯とカナの朝ご飯を用意して綺夜羅は学校へ向かう。


『カニャ~。行ってくるニャー、いい子にしてるニャーよ~』


 人が見たら引く位朝からデレッデレだ。


 愛車のCBRに乗り込むと一気に走っていった。


 彼女が通うのは平塚西高校。そこに中学の同級生、蕪木掠かぶらぎかすめ二階堂燃にかいどうもえ京極数きょうごくかぞえ雛葉旋ひなばめぐる赤松珠凛あかまつじゅりんらと通っている。


 学校に着くと駐輪場で掠と燃と数が待っていた。


『あ!おはよー綺夜羅』


 燃が手を振った。


『おう、おはニャ…おはよう』


 かれこれカナと話す時は決まってニャンニャン言葉を使うのでたまにそれが切り換えられない。


『おい掠、聞いたか?あいつ今ニャって言ったぞ。おはニャ、だってよ』


『綺夜羅ぁ。あんたバイク屋じゃなくて猫カフェとかメイド喫茶とかで働いたら?』


 掠と数はそういう所を絶対見逃さない。綺夜羅は顔を赤くしている。


『もぉー、いいじゃん。なんであんたたちそうやってすぐちゃかすの?』


 燃がフォローするが、まず2人はやめない。


『別にちゃかしてねーよ。あたしはいいと思うぜ?ニャンでもワンでもウホでもよ!なっ、キヨニャン。早く行こーぜニャー!』


『てめっ!数ぇ!ぶっ殺す!』


 綺夜羅が顔を真っ赤にして追いかけようとすると数は笑いながら一足早く逃げていった。


『あんのヤロー…あれ?今日めぐと珠凛はよ』


『あー、なんかちょっと遅れるって』


『ふーん。寝坊か?』


『さぁ、なんも言ってなかったけど』


 仕方なく綺夜羅たちは教室へ向かった。

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