第14話 恩返し
愛羽たちは樹が帰ってからもしばらく樹の話をしていた。
『もう!豹那さん!なんであんなかわいそうなこと言うの!?ひどいよ!』
『は?あたしがなんか言ったかい?』
『樹さんに意地悪なこと言ったでしょ!?』
『意地悪?さぁ、なんか言ったかねぇ~』
『蓮華。豹那さんは樹さんのこと元気づけようとしたのよ?』
『僕もそう思ったよ』
蓮華が豹那に文句を言っていると蘭菜と風雅がその間に入った。
『ちぇっ。もう、2人は甘いんだから』
そんな中、麗桜はやはり樹のいなくなってしまった親友のことが頭から離れなかった。
『なんだ麗桜、腹でも痛ぇーのか?』
こういうことに鈍い玲璃は平気で土足で入っていく。
『違うわよ。きっと心配なのよ、樹さんのこと』
『分かる。あの話切なかったもんね』
蘭菜が子供にでも諭すように玲璃に言うと蓮華も頷いた。
『俺、その優子って人のこと探してみようかな』
その言葉に愛羽たちはすぐ反応した。
『俺、東京と戦った時助けてもらって大阪の時も駆けつけてくれたのに、まだ樹さんに何も恩返しできてないし、何かできるならしてあげたくてさ。今日の話聞いてたら、その人探して会わせてあげたいなって思ったんだ』
樹を思う麗桜の気持ちに愛羽はすぐ応えた。
『じゃあみんなで探そうよ!その方が1人で探すより見つかるかもしれないでしょ♪』
愛羽はそう言うとニコッと笑った。
『愛羽…』
しかしここで賛成しない声が上がった。
『やめといたらどうだい?』
豹那はふざけているのではなさそうだ。
『お前たちの気持ちにケチつけるんじゃないんだけどね、それは完全な他人事さ。仮にもしもお前たちが行って会えたとして事情を話したからって、じゃあ会いますよ、なんてなるんだったらね、もうとっくに会ってるだろうさ。余計なお世話だよ。哉原だってそれ位分かってるんだ。そこをお前たちが行って変にこじれでもしたら、どうするつもりなんだい?』
豹那の言っていることは説得力があった。
『じゃあ…行かない方がいいの?』
麗桜が答えを求めると豹那は少し強めの口調で言葉を返した。
『行くな、とは言わないよ。でもいいかい?あたしは首突っこむべきじゃあないとは思ってるよ。もしお前たちがそれでも行くなら、その辺のことは肝に銘じておくんだね。哉原だって、自分の中でなんとかしようとしてるんだ』
豹那が樹の話の後で皮肉を言ったのは、ただの意地悪ではなかったことを全員が確信していた。
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