新春
【新春-1】
1月5日。部室には、四人の部員が集まっていた。蓮真、中野田、安藤、福原。三年生たちである。
「いやあ、全員集まれてよかった」
企画したのは、安藤であった。全国大会も終わり、しばらくは部活ものんびりとした感じになる。ただ、三年生たちには一つの使命があったのだ。
「安藤、実家には?」
蓮真は駒をカラ打ちしながら尋ねる。将棋部員の多くが身に着ける癖である。
「昨日帰ってきた。あんまりいると、遠い親戚からもお年玉ねだられるし」
「あげてるのか」
「まあね」
全員県内出身だったが、安藤と中野田は実家暮らしではなかった。安藤は山間部、中野田は離島の出身である。
「ところで、今日は何の集まりだ?」
中野田は小さな詰将棋の本を膝に置いている。最初に部室に来て、皆が揃うまで詰将棋をしていたのだ。
「まあ、そろそろ役員交代じゃない? 次期部長をどうするかとか、相談を」
「そんな時期……」
福原は、壁に貼ってある役割表を眺めた。それぞれの部員とその肩書が書かれている。ちなみに彼女は書記であり、今もペンとノートを持っていた。
「まあ、正直悩んでいるんだよね。この人が確実に部長タイプ、って言うのはないじゃない」
「まあ、そうだな」
二年生は会田、鍵山、猪野塚、菊野の四人である。この中から、次の部長は選ばれる。前部長が指名することになるのだが、安藤は皆に相談してから決めようと考えていたのだ。
その後四人は、一時間ほどかけて話し合った。そして次期部長が決まると、皆は部室を出た。
「初詣行こうか」
「おお、いいな」
「な、なんか四人で行くのは新鮮かも」
蓮真は、三人の様子を少し離れて見ていた。
あと一年でこの関係が終わってしまうのが、少し寂しいと感じ始めていた。
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