【9回戦-1】
9回戦
対宮森大学戦オーダー
1 会田(二)
2 佐谷(三)
3 大谷(一)
4 鍵山(二)
5 中野田(三)
6 バルボーザ(一)
7 福原(三)
最終戦が始まった。
1敗で3チームが並ぶという展開に、会場内も異様に盛り上がっていた。それぞれ別のチームと戦っており、5戦中3戦が優勝争いに関係する戦いとなっているのである。
菊野はノートをとりながら、不思議な気持ちになっていた。自分は、大会に出る予定は全くなかった。 順番で言えば、下から二番目だ。レギュラーにはとても遠い。卒業するのが北陽だけであることを考えれば、来年も状況はそんなに変わらないだろう。
それでも、いつか対局してみたいと思った。みんなと一緒に。
県立大の優勝は、かなり難しい状況となっている。紀玄館の相手は昨年準優勝の房総学院だったが、勝つのは厳しそうだった。紀玄館が負けても、古都大学には2勝分のアドバンテージがある。実際には、優勝の確率はかなり低い。
それでも県立大は、最後まで優勝を争っている。そのことに菊野はワクワクしていた。
もうすぐ団体戦が終わってしまうのが、惜しかった。
初手1八飛。相手の指し手に、福原はしばらく瞬きを繰り返した。
およそ考えられる初手の中で、ありえない類のものだった。とりあえず福原は初めて見る手だった。記憶を頼りに序盤を指す彼女にとって、とても困る出だしだったのである。
とはいえ、すぐに存在する形に合流するということはあり得る。とりあえず角道を開けて、様子を見る。三手目、8二銀。
福原はのけぞった。
もう、彼女のデータベースには全く類似局は存在しない。ひょっとして初心者なのか? と疑いたくなった。しかし、ここで初心者を出す意味は? 最後なので教育リーグにした? 相手の優勝がかかったこの場面でそれは、あまりにも無神経ではないか?
混乱する中、見たことのない将棋は進んでいった。銀を出て、桂馬を跳ね、とにかく相手は端一本で攻めてきた。とりあえず、初心者ではないことはわかった。無類の変態将棋使いなのである。
一番苦手なタイプが当たってしまった。データは全くあてにならない。そして、一番負けてはいけない対局でもあった。
冷汗が噴き出てくる。福原は口に手を当てて、必死になって頭を働かせた。
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