【8回戦-2】
大谷は目を丸くしていた。隣で蓮真が必敗になっていたのだ。
この八か月の間で、蓮真の強さは嫌というほど感じていた。どんな強豪と当たっても、何とかしてくれるのではないかというほどの信頼。仲間としては、これほど心強い存在はない。
幼いころから、羨望のまなざしで見ていた。隣県の仲の良い子供たちは、いつも楽しそうだった。その一方で大谷は、どれほど追いかけても鍵山に振り向いてもらえなかった。団体戦で一緒のチームになるということもなかった。
今は蓮真とも鍵山とも同じチームだ。そして今、仲間の蓮真が苦戦に陥っている。
優勝のためには、一勝でも多くしなければならない。蓮真が負けるならば、自分は絶対に勝たなければならない。
団体戦、苦しいけど楽しいな。
それを実感して、大谷は驚いていた。蓮真は敵だと思っていた。いやなやつだと思っていた。今でもライバルではあるが、もはや嫌いではなかった。蓮真一人に背負わせているものを、何とか自分も背負ってやることはできないか、と大谷は考えていたのである。
大谷は、と金を一つ引いた。最善ではないという感覚はあった。けれども、負けにくい手だ。負けるわけにはいかないのだ。
その後、じっくりじっくりと優位を拡大していった。絶対に負けない手順を選んだ。
最後に対局が終わった。チームはすでに勝利しており、県立大は五勝目を挙げたのであった。
8回戦
県立大学5-2海鳳学園
猪野塚(二) 〇
会田(二) 〇
佐谷(三) ×
大谷(一) 〇
鍵山(二) 〇
中野田(三) 〇
バルボーザ(一) ×
八回戦が終わり、全勝チームが消えた。紀玄館大学は古都大学に勝利し、勝ち数の関係でトップに立った。そして、県立大学にも優勝の可能性が残ったのである。
・県立大学の優勝条件
第9回戦
県立大学〇 紀玄館× 古都×
県立大学7-0 紀玄館4-3以下 古都5-2以下
紀玄館大学が5勝、もしくは古都大学が6勝以上した段階で県立大学の優勝の目はなくなるという、厳しい戦いとなった。紀玄館が4勝しかしなかった場合も、県立大学は全勝しなければならない。圧倒的に不利である。
しかしそれでも、可能性は残ったのだ。
「泣いても笑っても最後の一戦、全力で挑もう」
みんなを前にして安藤は言った。部長っぽいな、と心の中では少し照れ臭かった。
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