【7回戦‐1】

「メリークリスマス!」

 部屋に入ってきたのは、サンタの格好をした猪野塚だった。

「おっ、プレゼントかな」

「ケーキを買ってきたっす」

 北陽と中野田の部屋には、ミーティングのために部員全員が集まっていた。紙皿と紙コップが配られ、ケーキとワイン、未成年にはジュースが用意された。

「いやあ、まさか四年の内に三回四日市でクリスマスとはなあ」

「そっか、一年生の時も出てるんすね」

 猪野塚は深く感心していた。

「猪野塚君は四回出れるかもね」

「おお! 毎年クリスマスは彼女と過ごせない!」

「いるの?」

「来年はいるはず!」

 その後も将棋のことは話題に上がらず、それなりに盛り上がってクリスマスイブは更けていった。



7回戦

糸島大学戦オーダー

1 会田(二) 

2 佐谷(三) 

3 大谷(一) 

4 鍵山(二) 

5 中野田(三)

6 バルボーザ(一) 

7 北陽(四) 



 大会三日目、最終日である。

 県立大学の目標は、とにかく勝ち星を上げることである。古都大学がどこかで負けた場合、優勝は勝ち数の勝負となる。4-3勝ちが多い県立大学は、現状かなり不利だった。

 そして、最も険しい表情をしているのは鍵山だった。ここまで二勝四敗。調子がいいとは言えないし、前戦ではチームの負けにも絡んでしまった。当たりがきついとはいえ、期待に応えられていないのはわかっていた。

 まだまだ力不足だ、と鍵山は実感していた。全国で通用するような力は身につけられていない。蓮真のように、信頼されるような存在にはなれていない。

 ただ、残り全勝すれば、一応勝ち越しはできる。せめて、それだけは。

 鍵山は髪をかき上げて、盤面を睨みつけながら必死に考えていた。

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