前のエピソード――【5回戦‐2】

6回戦

対古都大学戦オーダー

1　会田（二）　

2　佐谷（三）　

3　大谷（一）　

4　鍵山（二）　

5　中野田（三）　

6　バルボーザ（一）　

7　北陽（四）　

　五戦全勝のチーム。今回初めての出場。

　一番端の席で、北陽はしばらく不思議な気持ちを感じていた。一年生の時は、先輩たちの快進撃をただただすごいと思って見ていた。とにかくオーダーで相手の裏をかこうとするので、出番がないとも限らなかった。それでも、どうせ勝ちが望まれないのだからとプレッシャーを感じることもなかった。

　それが、三年経って。今度は、自分が対局する側にいる。秋大会に続いて途中参加となってしまったが、それでもちゃんと対局者として参加している。

　相手は現在全勝の古都大学。これに勝てば、優勝はぐっと近くなるだろう。

　自分にとっての初勝利もかかっている。もし負ければ、次からは出してもらえないかもしれない。

　相手は古風な中飛車を指してきた。最近ではほとんど見ない戦型だが、北陽は対策を研究したことがあった。強い人がこういう戦型を選ぶときは、序盤は不利になることを見越している。だから、ちょっと良くなったぐらいでは喜んではならない。相手は一撃必殺の逆転か、こちらの息切れを狙っている。堂々と。淡々と。最後まで気を抜かずに行かなければならない。

　北陽は、少しずつ攻撃態勢を整えていった。

　蓮真は、いつになく厳しい目つきで盤上を睨みつけていた。

　前戦、いいところがなく負けてしまった。もちろん、強敵が相手だったということもある。だがそれ以上に、紀玄館に、そして松原に勝ったことで、気が抜けてしまったと思われても仕方がない。

　実際、蓮真の気持ちは少しうわついていた。松原や立川に対する怨嗟のようなものが、ずっと彼の原動力だった。そして今年、二人に勝利した。いわば今の蓮真は、呪いが解けて普通の人間に戻った状態なのである。

　このまま負け続けたら、呪いでしか戦えない人間になってしまう。あと、まだ完全に勝ったわけではない。最後に紀玄館より上の順位にいてこそ、「県立大に入ったことの正しさ」を示せるというものだろう。

　蓮真は、心の中でスイッチを入れ直した。