【2回戦-1】
2回戦
対日本海大学戦オーダー
1 猪野塚(二)
2 会田(二)
3 佐谷(三)
4 大谷(一)
5 鍵山(二)
6 中野田(三)
7 バルボーザ(一)
悔しい。
それが大谷の抱いている感情だった。
1回戦、チームは勝利した。しかし、自分は負けた。完敗だった。
昨年、チームは五位だった。その時は、野村という頼れる存在がいたと聞いている。もし今年県立大学が順位を落とすようなことがあれば、「卒業生に比べて新入生がショボかったから」ということになってしまう。
左には蓮真、右には鍵山がいる。昔からよく見てきた顔だ。とても勝ちたい二人だ。蓮真とは二学年違うので、共に戦えるのは二年間だけ。その間に、越えられるだろうか。
相手は前回順位の下位校。上位進出のためには負けられない。何より、自分のために負けられない。
大谷は飛車を振った。美濃囲いにしてじっくりと指す。この大会の持ち時間は40分。十分すぎる。
隣では、鍵山が難解な横歩取りを指していた。大谷には形勢がよくわからなかったが、決して勝ちやすい形でないのはわかった。大将は猪野塚だ。まだ信頼できるほどではない。それは七将のバルボーザもであった。
勝つしかない。大谷はきつく唇を結んで、盤面を凝視した。
「あー」
福原は情けない声を上げた。
「お疲れさま」
安藤はノートを睨みながら、ねぎらいの言葉をかける。
「佐谷君、あんなのずっと出ているんだね」
「本当にね。すごいと思うよ」
入学した時は、部員が八人しかいなかった。そのため大会に出ること自体は福原と安藤も普通に経験することができた。しかし蓮真はずっと出続けている。しかもかなり勝っている。
「それに……最近は落ち着いている気がする」
「そうだね」
蓮真の原動力は、「恨み」の力だった。共に県立大に行こうと誓った仲間が、紀玄館に入った。最初は二人に打ち勝つために、復讐するために将棋を指しているように見えた。けれども今は県立大学の一員として、頼れるエースとして将棋を指している。
「猪野塚君、どうかな」
「大将だからなあ」
「次も私よね?」
「その予定」
「怖いなあ」
福原は深い息を吐きながら、天井を見上げた。
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