【5回戦‐2】
大谷は、ちらりと隣を見た。中野田は攻めまくり、相手玉を追い詰めていた。
大谷は、自陣に視線を移した。固い。すぐに詰まされることはないだろう。しかし、攻めは完全に切れていた。ここから先は、じわじわと寄せられていくのを待つだけだ。
第4戦では、中野田が負けた。当たり前だが、蓮真も中野田も、必ず勝つわけではない。大将の自分と、七将のバルボーザ。対極的な位置にいる二人だが、今回一年生はとても大事な役割を与えられている。
全国大会で実感した。トップが来ても勝てると期待できるメンバーが何人いるか。それが、更なる上位に行けるかどうかのカギだ。かつての県立大には、それが四人いた。伝説のビッグ4だ。四人いれば、準優勝まで行ける。
今の県立大には、蓮真しかいない。鍵山も自分も、まだそこまでは至っていない。大谷にはその自覚があった。
ビッグ1。そんな言葉が頭の中に浮かんでいた。中野田や自分、そして鍵山がもっと上まで上り詰めれば、ビッグ4時代と同じような戦い方ができるかもしれない。
局面はどんどん悪くなっていく。ここで負けているようじゃダメなんだ。今までトップになれたことのない自分に打ち勝たなきゃいけないんだ。アズサに認められる男にならなきゃ。
いろんな思いがぐるぐると渦巻く中、ついに大谷の玉は詰まされた。
「鍵山さん勝ちです」
報告に来た星川が言う。
「よし」
残るは六将戦のみ。チームは5勝1敗。北陽は苦しそうだったが、それでもぎりぎりの勝ちではないので安藤はほっと胸をなでおろした。
「このままだよね?」
福原が尋ねる。
「そうだね。残りは全力で」
次は香媛大学戦。先ほど経済大学に負けが確定し、1敗を喫した。とはいえ、まだ優勝の可能性は残している。県立大戦も全力で来るだろうから、手を抜くということはできない。
最終戦を見据えるなら、惑わせるメンバーも出したいところだった。最終戦、経済大のエース牛原はおそらく副将で出てくる。そこに高岩を当て馬にするという作戦も一応あった。それをにおわせるほうが、経済大学戦だけを考えれば勝率は上がるのもかもしれない。
しかしそんな余裕はない、と安藤は考えていた。最近は常に香媛大学戦は接戦だ。今回はチームの状態がよく、勝てるとは思う。ただ、気を抜くわけにはいかない。
「次は三将が全勝対決になるかも」
「一年生が強いね。でもまあ、佐谷君なら大丈夫だよ」
安藤はオーダー表にメンバーを書き込んだ。あとはもう、仲間を信じるしかないのだ。
5回戦
県立大学5-2孝生学園大学
1 大谷(一)×
2 中野田(三)〇
3 佐谷(三)〇
4 会田(二)〇
5 鍵山(二)〇
6 北陽(四)×
7 バルボーザ(一)〇
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