決戦前

【決戦前-1】

 経済大学のレギュラー発表から二日後。大会前最後の月曜日に、県立大学でもオーダーが発表された。

「今回は中野田君も出れるということで、去年に続いて四日市に行けるよう、頑張りましょう」

 安藤はそう言うと、ホワイトボードに名前の書かれた紙を貼りだした。

「合格発表みたいだ」

 思わず声に出したのは閘である。



秋大会オーダー


安藤

高岩

猪野塚

福原

星川

菊野



「まあ、今回は僕が当て馬大将ですね。レギュラーは上から大谷君、中野田君、佐谷君、会田君、鍵山さん、北陽先輩、バルボーザ君になります。猪野塚君や福原さんは作戦によっては出る可能性が高いです。まあ、全員出るつもりで準備はしてね」

「大谷君大将!」

「切り込み隊長二刀流!」

 主役になったのは大谷だった。秋の一年生大将は、昨年の鍵山と同じである。

「まあ、俺こそ大将にふさわしいってことだな!」

 大谷は立ち上がって胸を張った。鍵山だけが冷ややかな目でその様子を見ていた。

「大谷君は、とにかく一番前で堂々としてくれると思うから期待してる」

「任せてください! 顔だけで勝ちます!」

「う、うん。春は接戦も多くて、紙一重の優勝でした。秋も苦戦が予想されます。ただ、うちの目標はあくまで全国大会での順位を上げること。ここで躓くわけにはいきません」

 蓮真と中野田の表情が引き締まった。昨年の全国大会のことを思い出していた。

 そして、部会が始まってからずっと一番険しい顔をしていたのはバルボーザだった。再びレギュラーの座を勝ち取った彼は、七将に指名された。夏の大会に続いての、一番下。それはつまり、「今度こそ確実に拾っていけ」との部長からのメッセージである。

 大会まであと五日。県立大学将棋部の、三連覇を目指す戦いが近づいている。

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