【6回戦-1】

「ここで勝てば、今後のためにも大きな勝利になるんだから。みんな、気合を入れて」

 北陽が、いつもよりも大きな声を出した。

「先輩の言うとおりだよ。まだ二敗。残りすべて勝てば、前回の五位は上回る」

 前部長と現部長の掛け声に、大谷だけが大きくうなずいていた。

 4勝1敗からの1勝4敗。エースの負けをリカバリーした勝利から、エースのみ勝利の敗北。そして、最強の紀玄館との対戦。流れはとてつもなく悪かった。

「佐谷君」

 蓮真の後ろに歩み寄った北陽が、小声でつぶやいた。

「え、はい」

「こういう時にチームをまとめるのも、エースの役目なんだ。僕が言えたことじゃないけど」

 蓮真は目を丸くした後、大きく息を吸った。

「みんな、ここまでよくやってる。一、二年生中心のチームだけど、全国で戦えてる。紀玄館に一泡吹かせてやろう」

 鍵山と会田の視線が少し上がった。バルボーザは目を閉じていたが、拳を握っていた。

「よし、皆行くぞー」

 安藤の声で、皆が対局部屋へと向かう。



6回戦 

対紀玄館大学戦オーダー

鍵山(二)-冬田(四)

会田(二)-松原(三)

佐谷(三)-国分寺(一)

大谷〇(一)-神楽坂(二)

バルボーザ(一)-峯井(四)



「えええ」

 安藤は思わず変な声を上げてしまった。

「驚いたね」

 北陽も、対戦表を凝視していた。

 紀玄館のオーダーは、全くの予想外の並びだった。これまで大将は立川と二年生の茂田しげたが交代で出ていた。二日目は二戦とも立川が出ており、そのまま来ると安藤は予想していた。あったとしても茂田と交代だ。しかし相手は、そのどちらも出さなかった。三将に一年生の国分寺を初めて出してきたのだ。彼もまた関西地区の準新人王であり、実力があることはわかっている。しかし、明らかに蓮真に松原を当てないためのオーダーだった。

 鍵山と蓮真は最初こそ怪訝な表情をしていたものの、すぐにいつも通りの顔になった。

 アマタイトルの獲得経験もある冬田は、最大の強敵である。大将戦は苦戦が予想された。松原もまた、ここまで全勝で調子がよく、実力者である。県立大学としては、下三枚で何とかしたかったが、五将峯井もまた、これまで紀玄館を勝利に導いてきたポイントゲッターである。

「しょうがないけど苦しいなあ」

 安藤をはじめ、控え選手たちはもう見守るしかなかった。

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