【5回戦-1】

 蓮真は、しばらくじっと部屋を眺めていた。机が並び、その上に盤駒が並べられている。

 昨日から、何度かすれ違ってはいた。お互いに、取り決めていたかのように目を合わせなかった。

 幼馴染の二人と、同じ会場にいる。そして、次の次で、チームが対戦する。

 意識していないつもりだった。もうそんなこととは関係なしに、県立大学将棋部の一員として戦っているつもりだった。

 けれどもあまりにもふがいない敗戦に、自覚せざるを得なかった。

 まだ、恨んでいるのだ。



対房総学院大学戦オーダー

1 鍵山(二)

2 会田(二)

3 佐谷(三)

4 大谷(一)

5 バルボーザ(一)



 5回戦の相手は房総学院大学、関東第一代表である。昨年度二位であり、強敵であった。

「そんなに強いんですか」

「まあな」

「どうなりますかねえ」

 高岩は、房総学院のメンバーを見渡した。全員眼鏡をかけていた。

「強そうだろう」

「そうですねえ」

 猪野塚は、険しい表情をしていた。

 ここまで、チームは3勝1敗。そして、五将のバルボーザも初勝利を挙げた。オーダーはずっと変わらず。二人は、出番がなさそうな雰囲気だった。

「出たいか?」

「そうですね。先輩は、高校の時から全国行っていましたよね」

 二人は同じ高校で、「将棋同好会」の仲間だった。部員が集まらず部に昇格することはできなかったが、週に一回教室に集まって将棋を指していた。そして、猪野塚は高校の時からセパタクロー部に所属していた。将来を期待される選手だったが、セパタクローがそれほど強くない県立大学に進学し、そして今年から休部となってしまった。

「そうね。けど、やっぱ違うよね、なんか。どっちも楽しいけど」

 将棋同好会は、県大会に出たことすらなかった。高岩は、将棋の大会が「こんなにまじめ」だとは知らなかったのである。

「全国二位に……勝てますかね」

「どうかな。でも、うちも弱くないよ」

 猪野塚は目を細めて、ほほ笑んでいた。

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