【3回戦-1】

「しまったなあ」

 安藤は自動販売機の前で、コーヒーを飲みながら背中を丸めていた。

「どうした」

 そんな安藤の横に、北陽が腰かけた。

「作戦ミスです」

「さっきの?」

「はい。先輩に……出てもらうべきでした。会田君と大谷君にかけるべきでした」

 2回戦、上二枚が不利な状況下で、「絶対に負ける」と思えば当て馬を出すのが普通の作戦である。しかし安藤は、そうは考えなかった。

「でも、二回戦だからねえ」

「はい。相手のオーダーも読み切れませんでしたし。あと、二戦目でバルボーザを替えるのも。勝ち抜いてきたレギュラーですから」

「わかるよ」

「それに、少し期待していたんです。今の鍵山さんと会田君なら、勝負になるんじゃないかと」

「そうだね」

「北陽先輩ならどうしましたか?」

「……自分を出した……とは言いにくいけど、当て馬中心で考えるね」

「やっぱり……」

「でも、いい作戦じゃないよ。そういうのをしたくなるよう、教育されたんだ。ビッグ4の亡霊というか」

「ビッグ4の」

「固定レギュラーで戦って、駄目なら駄目、それも一つの戦い方だよ。仲間を信用したんなら、それは誇っていいことだよ」

 安藤は、オーダー表に目を落としていた。すでに三回戦の欄は書き込まれている。ただ、今ならまだ修正は効く。

「ありがとうございます。出してきます」

「おう」

 安藤は、ゆっくりと立ち上がった。



対糸島大学戦オーダー

1 鍵山

2 会田

3 佐谷

4 大谷

5 バルボーザ

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