【1回戦-2】

「これは、オーダーはまったのかな?」

 安藤はつぶやいた。

 日本海大学は全国大会初出場なうえに、初戦は相手のメンバーが分からない中の対戦となる。出たとこ勝負、なのだ。

 大将から四将まで、県立大勢は局面をリードしていた。おそらく相手のエースも三将に来たことにより、ミスマッチがなくなり少しずつ県立大の方が強い状況が生じたのである。

 五将以外は。

 バルボーザはうつむき、頭をかきむしっていた。相手に龍を作られて、一方的に攻められていた。

「バルは厳しいか……」

 そう言ったのは高岩である。本大会では10人目のメンバーとしてメンバー表には名前が載ったが、最も出場のチャンスは少ないと思われた。五将決定戦では3勝5敗。レギュラー候補には1勝もできていない。それでも「上位10人」ということで名前を入れてもらえた。

 そんな自分に対して、バルボーザは五将を勝ち取った。ただ、強いというだけではない。遠い外国から日本に来て、一年間語学学校に通ったうえで彼は入学してきた。どうしても日本で将棋を指したい、という強い情熱を持った人間なのである。大谷ももちろん強いのだが、高岩はバルボーザの方に強い尊敬の念を抱いていた。

 そんなバルボーザが、敗勢に陥っている。

 負けてほしくなかった。一年生代表として、五将決定戦を勝ち抜いた者として、勝ってほしかった。けれども、全国の壁は厚かった。

 バルボーザの玉は、詰んでしまった。

 本人以上に、高岩が悔しそうな顔をしていた。そんな様子を安藤は黙って見守っていた。



1回戦

県立大学 4対1 日本海大学

鍵山(二)〇

会田(二)〇

佐谷(三)〇

大谷(一)〇

バルボーザ(一)×

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