夏大会
【1回戦-1】
夏大会 メンバー表
1 北陽(四)
2 鍵山(二)
3 福原(三)
4 会田(二)
5 高岩(一)
6 佐谷(三)
7 安藤(三)
8 大谷(一)
9 バルボーザ(一)
10 猪野塚(二)
「うげえ、吐きそう」
会場に入るなり、大谷はうめいた。
「大丈夫か、二刀流」
閘が、冗談めかして背中をさする。閘は今回出場の機会はないものの、どうしても大会を見たいと参加していた。
創実杯学生大会団体戦。北陽以外は、初めて訪れる大会だった。蓮真と鍵山は個人戦に参加したことがあったが、会場が異なる。
「これが全国大会……」
バルボーザは、しばらく会場を見回していた。各チームエントリーだけでも10人で、参加者は100人になる。実際は閘のようにエントリーしていない者もいるため、会場は人だらけであった。
「バルも緊張するんだな!」
「しますよ」
猪野塚はずっと陽気だった。幼いころからいろいろな競技で参加しており、彼は全国大会に慣れていた。
「さ、そろそろ準備するよ。オーダーは予定通りで」
安藤の言葉で、部員たちの表情が一気に引き締まった。いよいよ、大会が始まる。
対日本海大学戦オーダー
1 鍵山(二)
2 会田(二)
3 佐谷(三)
4 大谷(一)
5 バルボーザ(一)
「なんか、様子おかしいよね」
「……うん」
安藤と福原は、対局の様子を見ながらヒソヒソ話をしていた。
視線の先には、蓮真がいた。今回は、主に三将で出場することになっている。安藤は、できるだけ固定オーダーで戦う覚悟をしていた。当て馬も入れず行く中では、「大将鍵山」がぎりぎりの選択だった。昨年の冬大会の結果から、県立大で注目されるのはどうしても蓮真ということになる。野村がいればターゲットが分散しただろうが、ないものねだりである。蓮真が外された場合は会田と大谷で拾う。五将は実力で何とかする。それが主な作戦だった。
五人制においては、エースの敗北は大きな痛手となる。蓮真にはなんとか勝ってほしい。部員たちは皆そう願っていた。
だが、昨夜から蓮真は覇気がなかった。元々多弁ではないが、それにしても喋らなかった。じっとどこか一点を見つめている時間が多かった。
「なんでだろう」
「うーん……」
「そりゃ、中野田先輩がいないからっすよ」
あっけらかんと言ったのは、猪野塚だった。
「中野田君が?」
「やっぱり、同学年のライバルって元気の源じゃないっすか?」
元々、蓮真と中野田はそれほど仲がいいわけではない。部活を離れて会うことなどめったになかった。それでも、ここまでずっと一緒に戦ってきた仲間である。
安藤は、申し訳ないと思った。同級生だが、プレーヤーとしては蓮真の気になる存在にはなれなかった。その役目は、中野田がずっと一人で背負ってきたのだ。
「なんとか、将棋は元気であってほしいけれど」
祈るような気持で、安藤は蓮真のことを見つめ続けた。
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