【五将決定戦-2】
「あっ」
「そっか」
福原が口に手を当てて、北陽は頭を抱えた。
ここまで1敗できていた北陽だったが、最後の最後に王手飛車をかけられて、あっという間に逆転されてしまった。そして、福原が1敗を守った。
五将決定戦は、二日目に入っていた。最終戦を前にして、6勝1敗で福原とバルボーザが残り、この二人が最終戦をすることになっていた。
勝った方が五将という、わかりやすい構図になった。
「じゃあ、4時から始めようか」
蓮真が対局開始時間を皆に伝えた。
「うう……」
「よく頑張ったぞ」
大谷が閘の肩を叩く。最終局抜け番の閘は、0勝8敗ですべての対局を終えていた。
「ああ、二日で8局指した経験は、必ず生きる」
蓮真も言葉をかけた。閘は何とか顔を上げた。
「いつか、俺でも出られますか」
「努力次第だ。三年で有段者になる奴なんていくらでもいる」
「頑張ります」
六人が次々に盤の前に着席していく。駒箱を開け、駒を並べていく。レギュラーの四人と閘が、その様子を見守っている。
「では、並べ終わったら振り駒をして始めてください」
これまで団体戦にずっと出続けてきた蓮真にとって、対局を取り仕切るというのは初めての経験だった。中野田不在で部長の安藤が対局者なので、蓮真が担当するのは必然の流れだった。
ここまで福原は猪野塚に、バルボーザは北陽に負けていた。この四人は実力が伯仲している、とレギュラーたちは感じていた。
対局が始まり、進んでいく。福原とバルボーザの対局は角換わりになった。記憶力抜群の福原は、一度見たプロの棋譜はすべて覚えている。バルボーザもそのことはわかっていたので、序盤から前例のない仕掛けをしていった。
中盤は、少し福原の形勢が良かった。ただ、バルボーザは次々と勝負手を繰り出していった。次第に福原陣が歪んでいく。
ついには、網が破れた。どんどんと攻められ、福原玉は中段に逃げ込む。入玉しか勝つ望みはなかったが、バルボーザはうまく待ち駒を置き、入玉させなかった。
「う……ん。負けました」
福原が礼をして、対局は終わった。バルボーザはじっと、盤面を見続けていた。
「1位決まったな」
「バル、やったな!」
大谷がバンバンと背中を叩く。バルボーザは、深くうなずいた。
最終成績
7勝1敗 バルボーザ
6勝2敗 北陽 福原 猪野塚
5勝3敗 安藤
3勝5敗 高岩
2勝6敗 菊野
1勝7敗 星川
0勝8敗 閘
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