第2話 突然の旦那様からのご指令ですね! ご主人様♡①
国芸館高校に転校してきた
という話は広がるわけがなかった。
この話はボクと彗さんの二人だけの秘密なのだから…。
そりゃそうだ。
だって、ボクらは高校2年生。
しかも、国芸館高校はそこいらの金持ちの御曹司やお嬢様が入学しているという至って、普通ではない学校だ。
それ以上に、ボクにはこのメイドに対して、大きな問題を抱えていたりする。
それは————、
「おはようございます。彰様…朝ですよ」
「うん、今起きる…て、近っ!」
そう、彼女はボクの女性に対する免疫を付けさせようと必死過ぎて、高濃度の逆セクハラをかましてくるのである。
彼女が来てから、毎日毎日、起床はこの起こされ方だ。
「随分と寒そうでしたので、直接肌で温めさせていただいた方が良いかと思いまして…」
そういって、ボクの腕に豊満なIカップのバストを押し付けてくる。
あは…、柔らかいね…。
て、違—————————うっ!!
「ちょっと日に日に肌の近づけ方が過激になってきてない!?」
「いえ、ご主人様はなかなか反応されないので、こういうことをご所望かと考えを改めました…」
彼女はふぅ…とため息をつきながら、悩ましげな表情をする。
「いや、ボク、そもそも望んでないから! あと、改め方が絶対に間違ってる! やらないという選択肢はないの?」
「私は彰様のメイドです。彰様にでしたら、どのような
「いや、辱めなんてするはずがないでしょ!」
てか、どういう脳細胞の作りしてるんだよ!
ボクはそもそも彼女を辱めをするために雇ったのではない。
ボクなりの彼女に対する気持ちの表れだ。
助けてあげたかった。
ただ、彼女にはそんな甘っちょろい優しさなどボクに持たれても嬉しくないかもしれない。
これまでもずっと様々な苦労を積み重ねてきたようだから。
ボクはそのような話を彼女から聞き出したわけではないが、彼女に公園で出会ったときの表情や話しでそう感じた。
「とにかくベッドから出てくれないかな…。ボクもそろそろ着替えて朝ご飯を食べるよ…」
「かしこまりました」
といって、彼女は
すると、ボクの目の前に彼女の白い肌が現れる。
「ええっ!? 何で、ブラジャー着けてないの!?」
ボクは瞬間で目を逸らし、彼女の姿に突っ込む。
彼女は自分の露わになった豊乳をチラリと見て、無言のまま、ボクのベッドに手を突っ込む。
きゃぁ————————っ!? 今度はボクのナニを何されちゃうの————っ!?
「あ、ありました」
と、言って、彼女はボクのベッドからブラジャーを取り出す。
学校では清楚と言われている彼女から程遠い黒のブラジャーだった。
当然、セットなのでパンツも…ぶぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!?!?
「ど、どうして、下は紐パンなのでしょうか…、彗さん?」
「嫌ですわ…。そんなに視線を向けないでください…。身体が火照ってしまいます」
「それはアウトなライン越えなのでは…?」
「違います。私は痴女ではありません!」
「ごめん…。全然、説得力がないよ…。と、とにかく、今から朝ご飯が食べたいんだけど…」
「もう、すでに準備が整っておりますので、服を着替えたらいらしてください」
「う、うん…。分かったよ。ありがとう」
「このような起こし方でよろしいのであれば、毎日でもして差し上げますわ」
「いや、今のありがとうは、食事のほうのこと…」
「左様でございますか。では、リビングでお待ちしておりますので」
「あ、うん…」
ボクがそう返事すると、彼女は痴女のような下着姿のまま、ボクの部屋を去っていった。
正直、あれが毎日続くと、ボクの精神は間違いなく崩壊しちゃうよ…。
初めての相手が、自分のメイドというのはまだいいとして、高校の同級生でしかも、ボクらは未成年だ。
理性が吹っ飛んで襲ってしまったら、ボクの将来も終わってしまう…。
これって誰かからの罠?
誰? 後継ぎを狙ってる弟の罠!?
「まだでしょうか…?」
「きゃ~~~~~! 今、着替えてるところだから、ノックなしに開けちゃダメでしょ!」
「失礼いたしました…」
「全く、何だかボクの感覚が間違っているのかと不安になってきちゃうよ…」
寝間着から部屋着に着替えて、リビングに出ると、すでに朝食がローテーブルに並べられていた。
ご飯にお味噌汁、干物の焼いたものにほうれん草のお浸し。
実にシンプルだけれど、いつも食パン1枚で朝食を終えていたボクにとっては、こんなに立派に朝食を食べさせてもらえるだけ幸せというものだ。
「いただきます」
「はい、どうぞ、お食べください」
と言いつつ、自分の胸元を強調するのは止めてください!
て、そんなことを思うと、さっき押し付けられた柔らかさを再び腕に甦ってくる。
ああ、もう忘れさせて——!
ボクはご飯をかきこみ、必死に忘れようとしながら朝食を食べた。
チラリと彼女を見ると、洗い物をしながら、ふっと口元だけ笑っていた。
うう…。小悪魔め…。
「ところで、彗さんは食べたの?」
「私ですか?」
お願いだから、ボクの耳元に瞬間移動して囁くの止めて…。
「私は食べさせていただきましたよ。最初に毒見として」
「ええ!? そんな危険なことしてるの!?」
「まあ、自分で作ってますので毒を混ぜるとするならば、自分でしか入れるチャンスはないんですけれどね…。ですので、ご安心ください」
「そ、そうなんだ…」
ボクは少し俯きながら食事を続ける。
何かさぁ…。ボクの人生って今、彼女の手の平で転がされているような気がしてならないんだけれど…。
うーん。考え過ぎかな。
「考えすぎですね…」
え? ボクの心も読まれてるの!?
ボクと目が合うと、ふふふと微笑んでる。
怖ぇ…。
そんなネガティブな気持ち満載の朝食(味は最高に美味しかった)を終えて、熱いお茶を飲んでると、インターホンのベルが鳴った。
「私が出てきますね」
「あ、うん。お願い」
彗さんはインターホンの受話器を手に取りいくつか言葉を交わした後で、ドアのロック解除のボタンを押す。
どうやら、ボクの知り合いが来たらしい。
こんな朝早くから誰だろうか…。
「ちなみに誰が来たの?」
「旦那様です」
ぶばぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!
熱いお茶をボクは勢いよく吹き出した。
目の前に髭を蓄えたラグビーでもやっていたのではないかというような体格の人物。
それがボクの父親、藤井寺豊彦である。
「紅茶になります」
彗さんはそっと父親の前、そしてボクの前に紅茶を並べる。
真ん中にはいつの間に買ってあったのか分からないが、クッキーも置かれた。
「まだこちらの住まいにお世話になり始めてからそれほど月日も経っておりませんでして、これくらいのものしかご提供できず申し訳ありません」
彗さんはボクの親父に深々と頭を下げる。
親父はカップを取り上げ、そのまま口に運ぶ。
「ふむ…」
親父は紅茶を一すすりして、深めに頷いた。
「良い味ではないか。市販の紅茶でこの味が出せるのは、煎れる者の技術も素晴らしいことを証明している。それほど、かしこまらなくてもよい。それにこのティーパックというものも手軽で良いな…」
「ええ、彰様は私のティーバックを毎日ご堪能いただいています」
「ふむ?」
いや、父親との真面目な話の時にサラッと痴女みたいな会話入れなくていいから!
「で、親父はどうして急にこのマンションに来たのさ…。普通、用があれば電話だったり、ボクを屋敷に呼ぶとか色々方法があるじゃないか…」
「うむ…。そうなのだがな…」
蓄えた髭を手で揉むようにゴシゴシと触り、
「実は大変なことが起こったのだ…」
「え………」
ボクは唐突な何の脈絡もなく始まった話に衝撃を受けた。
―――――――――――――――――――――――――――――
作品をお読みいただきありがとうございます!
少しでもいいな、続きが読みたいな、と思っていただけたなら、ブクマよろしくお願いいたします。
評価もお待ちしております。
コメントやレビューを書いていただくと作者、泣いて喜びます!
―――――――――――――――――――――――――――――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます