草原
翼がない。
動かない。
草原。
赤い月。
うさぎが跳ねる。
Uが居る。
かかしのように立っている。
おまんじゅうが落ちているらしい。
うさぎが探し回っている。
見つからないことを教えてあげない。
うさぎが嫌いだから。
Kの片目はない。
自分で潰す過去。
Kの片目は赤い。
心臓は釘で刺す。
いつでも死ぬ。
いつでも生きる。
Uは笑う。
彼は何処にでもいる。
死神のように。
ヒトダ。
「此処には何もない」
Uは草原を形象する。
Kはリンゴを拾う。
「赤いリンゴだ。林檎の樹は見当たらない。此れは奇跡だ」
「奇跡なんてない。空を見上げなさい」
Kは空を見上げる。
青空に影。
林檎の樹。
「大樹にも程がある」
「想像を絶する世界がある」
Kは片翼がない。
古傷。
痛ましい。
「しかし、林檎は朽ちていない。弾けていない。やはり奇跡だ」
「奇跡だからなんだと言えるんですか」
「天国への階段がある」
「ありません」
「可能性の話だ」
執拗に構ってくる。
うさぎは跳ねながら呟く。
「お月見をしたい。団子がいる。なければ死んでしまう。お月見をしたい。だれか付き合ってください。お腹がすいた。お月見をしたい。団子は何処だ。どこまでも。」
「哀れなうさぎだ」
Uはピストルを構える。
ばきゅん。
ぐわん。
うさぎは死ぬ。
赤い血を流す。
UはKを見る。
「救いはない」
UはKに示唆をする。
何故うさぎに駆け寄らないかと。
駆け寄りません。
うさぎに興味はない。
死体だ。
Kの意思が伝わる。
Uは笑う。
「私たちは同類だ」
Kは苦い顔をする。
かまいたちのような存在と同じにされてたまるモノか。
しかし伝えない。
話せば近づくから。
決して近づいてはならない奴がいる。
Uだ。
Kは林檎の大樹へ向かう。
アテはない。
空だけが答えだ。
Uは不愉快に笑う。
奴はかつての露商だ。
これからも変わっていく。
Kの前に姿を表す。
月が浮かぶ。
赤い。
月を斬る。
残血。
太陽の仕業。
全ての星の仕業。
地球もだ。
月をよってかかって虐める。
白くなんかいられない。
母親の言葉を想う。
烏に対する見解。
『鳥の汚れを請け負うのが烏。私たちは白過ぎる。故に最も黒い。』
カラスは狙われる。
傷モノは要らない。
ヒトダ。
ヨゴレダ。
汚くは痛くない。
知っているか。
烏ほど綺麗な鳥はないと。
ヒトダ。
首を横に振る。
綺麗かどうかなんて関係ない。
「私が汚いと想うかが重要。」
銃弾が放たれる。
ぱきゅーん。
音が響く。
ヒトダ。
獣の事情は関係ない。
邪魔なら刈り取られる。
其々の程よい距離。
バランスを取るためには刈り取られるしかない。
空まで襲わない。
地面に獰猛な鳥はいらない。
鳩以外来るな。
Kは烏だ。
Kは鳥の魂がない。
Kはゾンビだ。
生きているのが不思議だ。
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