第97話 判明
バイクや車は機械である。
当たり前の事である。オッサン少し休んだ方がいいよとか言わないように。俺だってそれくらいは分かっている。でも時々コイツ生きてるんじゃね?と不思議に感じることがある。
乗り換えを検討し始めたら急に調子が悪くなったなんて話聞いたことあるでしょ?
まあ乗り換えを検討するのは古くなったからで、だからいつ故障してもおかしくはないんだけど、そのタイミングが絶妙だったりするとそこに何某かの意思を感じちゃったりするだけなんだけどね。
可愛がっているときは
そうすると自分が売られるのが分かって拗ねてるんじゃないかなんて根も葉もない物語を勝手に作って妙に納得したりしてしまうのだ。
多分それ乗り換えの検討してなくても調子崩してますから。
逆に考えればそろそろ調子悪くなりそうだなと感じるくらいにはその機械の事を気遣っていた証拠でもある。だからこそ乗り換えを考えたりするんですよ。それは立派な愛情だよね。
と、そんなことはさておき鵞鳥である。
マメに乗って可愛がってあげてるつもりなんだかどうやらご不満の様である。
束縛系?美人とすれ違って鼻の下伸ばしてると即機嫌悪くなったりするの?
何とか家までたどり着き、懐中電灯で照らして覗き込みながらチェックするが異常は発見できないので諦めて明日はチョロQにしとくかと思いながらモヤモヤとした夜を過ごしました。
明けて翌朝、いつもよりちょっと早めに車庫に向かうと妙な違和感に気付いた。
(ん?なんか鵞鳥歪んでない?)
近づいてみると確かに右のテールが下がっていてナンバープレートとテールランプが平行になっていない。何だこりゃと右のウィンカーを持ち上げるとリアフェンダーが持ち上がり正常な位置に戻るが手を離すと再びでろーんと下がってしまう。
「!」
その時、稲妻の如き閃きが俺の灰色の脳細胞を駆け抜ける。(大げさ)
アイツか!またアイツの仕業か!!
リアフェンダーを下から覗き込んでから玄関から鵞鳥の鍵を取ってくる。鍵を使って外したリアシートの下には予想に違わずそれが転がっていた。
10ミリのナット。
そもそもナットは単体では意味を成さない。ボルトと対になって初めて役目を果たす事ができるモノである。しかしリアボックスの中には大切な相方であるボルトの姿はない。
何故か?
昨夜外れて落ちちゃったから。
その証拠に本来はそこにあったであろう場所にはポッカリと丁度良さそうな穴が
空いている。リアフェンダーの裏側から貫通してフレームのステーに固定されているボルトが左側にはあるが右側はない。良くわからんアース線もブラブラしてます。
木を見て森を見ずとはこのことか。離れて全体を眺めてみれば一目瞭然だった。
振動で緩んで外れちゃったんだな。そしてボルトは抜け落ちてホイールかスイングアームに当たって金属音を響かせて夜道に飛んで行ったというところだろう。
普段の整備は大切だね。ちゃんと増し締めするようにしよう……てなるかい!
一々
すっかり慣れて気にならなくなってきてたけどどんだけ振動あるんだよ!!!
ある意味凄いわ。こりゃあ見えるとこのネジは全部確認しておかないとそれこそ走行中に本気で分解しそうだ。そんな脅し掛けないでもちゃんと整備してあげるのに。
昨夜の音の原因が判明してスッキリしたけど今度は他のネジも緩んでるんじゃないか疑惑が持ち上がってしまったので確認が終わるまでは鵞鳥はお休みです。まあ今日帰ってきたらやっちゃうけど。
そんなドタバタを朝からこなしてちょっとお疲れ気味で予定通りチョロQで出発するオッサンでした。
まぁ駆動系でなくて良かったよ。
うん、真面な勤め人なら遅刻だな。
鵞鳥が飛んだ 銀ビー @yw4410
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。鵞鳥が飛んだの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます