第94話 目標とは
店を片付け
今晩の目標はメインのタンクの補修だ。
早速洗ったタンクの乾き具合を確認。うん、しっかり乾いたね。
側面には黒マジックの印が付いている。洗う時に水を張ったバケツに沈めて空気の漏れがある場所を確認しておいた。幸いなことに仮補修したとこ以外からの漏れはありませんでした。
まずは印を中心にマスキングテープで囲んで脱脂。油が残ってると付き悪そうだもんね。
脱脂が済んだら軽く粗目の紙やすりで表面を荒らす。少しでも足つきを良くしたい悪あがきだ。
その後で漸くはんだごての登場です。しっかりと温めたこて先でクラックと思われる場所を少し線状に削っていく。深くなりすぎて穴開けないように慎重に、慎重に。
浅くV字に削れた溝ができたらそこにタッパー溶接棒を溶かしながら埋めていく。
傷を広げてから埋めるなんてやってることはマッチポンプな気もするけどこの方が密着が良くなる気がしてやってみました。単純に面積が広くなるんで良くくっつきそうでしょ。まあ小細工第一弾ですね。
そして小細工第二弾。
ネジで固定されているだけのこて先を外してそこにこて先の軸径と同じような皿ネジをセット。ネジがしっかりと温まるのを待つ間にタッカーの芯をバラしてちょっと足が長いのでニッパーで切って調整。それを盛り上がった溶接部分をまたぐように置いていく。
その芯を上から皿ネジで押し付けてやるとあら不思議。ズブズブと埋まっていくじゃないですか。イメージはブラックジャック先生のあの有名なサンマ傷です。タンクの内圧で左右に引っ張られた時用の補強ですね。効果があるのか全く分かりませんが思いついたことはやっておきます。
タッカーの芯がない部分も皿ネジの頭を押し付けて平らに均していけば作業はほぼ完了だ。あとは冷めたらヤスリで表面を軽く削って終了です。
見栄えは素人仕事なんで目を瞑ってもらおう。漏れなきゃいいんです。手段と目的をはき違えてはいけません。
すぐにでも塞がったかを水に沈めて確認したいとこだけどそこは急いては事を仕損じると言い聞かせて冷え固まるのをジッと待ちます。
ただ待ってるのは退屈なのでついつい他の事に手をつけてしまう。いや、たまたま目についちゃっただけですので。(全然ジッとしてない)
ふと見たらフロントブレーキのキャリパーが結構汚れてるように見えたんですよ。キャリパー清掃くらいならそんなに時間かからないよねと早速マウントのボルトを外してみたりする。
『カツン』
え~と、ホイールに当たってディスクから外れませんけど。(ガビーン)
うん、やらかしですね。触らなくていいことに手を出して明らかに失敗してます。
普通はここでそっと戻して無かったことにするんでしょうね。
ふっふっふっ。俺もナメられたもんだぜ。
いいだろう。その喧嘩買った!
誰も喧嘩などは売っていない。
ただのバカである。バカのバカたる所以全開である。
そっと元に戻しても誰も責めたりしないのに。やろうと思ったことが出来なくて悔しいのである。(子供か)
そうとなれば行動あるのみ。
BBQでわが玉座としての役目を果たしたビールケースを持ち込みその上に
まずはメーターケーブルを外す。フロントのアクスルシャフトを抜くのはリア程大変ではなく工具さえあれば苦労はない。
フロントタイヤを外して角度を変えながらキャリバーを動かしてみるがやはり外れない。早々に諦めてブレーキディスクを固定しているボルトを緩めて浮かせると漸く外れた。いや、手間かかりすぎでしょ。でも俺の勝ちだな。
ん?ブレーキオイルのリザーバータンク開放してキャリパーのピストン押し込めば行けたような気も…。
どちらにしても外れたんだから無問題としておく。
目標を達成できて満足そうにぶら下がっているキャリパーを眺めていると棚のデジタル時計が目に入る。余計な事で遊んでいるうちに時は無常に過ぎ時計の表示は22時前。
そこでふと重要なことに気が付く。
あっ漏れチェックできてない。目標とは一体…。
自分の計画性の無さが全ての原因なので誰かに当たることもできず『一晩おいた方がしっかり固まる』とか苦しい言い訳を自分にしながら諦めて今日は帰りましょうかね。(泣)
帰り道のカナブンミサイルがいつもより痛い気がしたのは何かの戒めだろうか。
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