第77話 やっぱり
結論から言わせて貰おう。
木島さん、三音里ちゃん、翼ちゃん。ありがと〜。
十時を過ぎると先週と同じようにパラパラとお客さんが入り始めた。
決して広いとは言えない店内は直ぐに満席となり、十一時には先週慌てて準備した順番待ちの名簿に名前が書かれるほど。その間にテイクアウトも二件入っていると言うのに。
来客のペースはこの時点で既に先週を上回っている。
やっぱり今週も混むのね。
幸いだったのはホットドッグの注文が多い事。ランチには早い時間だからなのだろうが手間がかからず助かる。入口に貼ったチラシも早速役に立ったようで嬉しい。
今日はパンもソーセージも補充したストックが潤沢にあるので在庫切れの心配はない。ならばと思い切ってソーセージを先に調理しておくことにした。たった六本だけどね。フライパンにそれしか入らん。最悪残ったら俺の夕飯だな。酒のあてが増えるだけだ。
当然、パンも常温で解凍しておく。これだけでも焼き時間がだいぶ短くなる。
そうこうしているうちにも無駄に広いと思っていた駐車場が埋まっていく。駐車場渋滞とか面倒見切れんぞ。そのうち『駐車場内の事故に関しては云々かんぬん…』とか出さなきゃいけなくなったりするのか?
先週と同じでバイク乗りが多いのだが今日は結構車のお客さんもいる。
紅葉には早いけどツーリングやドライブにはいい季節だからね。
テイクアウトはライダーたちが気軽に待たずに小腹を満たせればいいなと思っていたのだがどちらかと言うと予想外の混み具合を見た車のお客さんの注文の方が多い気がする。
車のメリットは既に寛ぐスペースが確保されているとこだろうか。何しろ寝ることだってできる。こればっかりはバイクでは太刀打ちできません。
俺のリアルチョロQみたいな実用性無視の車はともかく主流の車内空間が広いミニバンやワゴンならちょっとしたキャンプだろう。車中泊なんてものも流行っているから車中での食事による汚れや匂いに対しての忌避感が減っている気がする。
そんな事を思ったせいでもないだろうが珍しい光景もあった。発売当時にはABCなどと呼ばれたチビッ子トリオが駐車場に揃ったのだ。
どうやら先週のお客さんの中にアップした人がいたらしく態々AとCが連れ立って来てくれたらしい。許可などした覚えはないがナンバーにモザイクが掛けられているのはまだ良心的と思うべきなのだろうか。
見たい。誰よりも見たい。でも厨房から離れられない。(泣)
中でもガルウィングが特徴のAは俺も見たかった。触りたかった。(何ハラ?)
とにかく見た目のインパクトが。
ドアが上に開く造りもだが窓なんかマッチョなら腕が通らないんじゃないかと思う程度しか開かない。まあ肩にメロン乗せてるような特殊な体型じゃ乗れないくらい中も狭いから余計な心配だな。何しろデザイン優先でスペアタイヤをシートの後ろに押し込む様な設計ですもん。そりゃ狭くなるよ。普通の人でも駐車券取るのも一苦労だろう。
全体のルックスは車高はうちのチョロQよりも低いし丸目の可愛いライトのデザインもあってまんまモ〇カーのようだ。PuiPui。でもエンジンは当時最強の呼び声もあった他メーカーのターボエンジンを積んでいるという変態具合。
この悪ノリ感が堪らないのだが商業的には鵞鳥より少ない四千台ほどしか売れなかったようなので中々お目にかかる機会はないのだ。
今回はオーナーさんが撮影許可を求めてきたので特に断る理由も無いので了承しました。またどこかのSNSに載るんだろうか。勝手に宣伝してくれる有難い存在でもあるのだが。
鵞鳥どこいった。
昼を過ぎる頃にはガッツリと食事目的のお客さんも増えて益々厨房から離れられなくなっていた。
そのせいでフロアは三人の助っ人に任せきり状態なのだが木島さんが上手く回してくれている。三音里ちゃんと翼ちゃんが交代で下げた食器も洗ってくれるので食器に調理台を占領される事も無く効率よく調理が出来る。大助かりだ。
明らかに先週より混んでるけど仕事量的には全然楽だ。
調理の合間にちょいちょいフロアを覗いていると新たな問題が出てきたりもする。
トイレが大忙し。
店内にはお客さん用のトイレが一台あるのだが増えたお客さんの数に対応できていない。
テイクアウトのお客さんもトイレを借りたいという人が結構いるのだ。
入店待ちは目立たなくなったけど今度はトイレ待ちの人がいたりする。
確かに俺も休憩で停まる時にはトイレも済ます。
何なら綺麗なトイレがあるからついでに休んだりもする。
こればっかりはアイディアでどうこうできる物ではない。
店内に増設するにしても駐車場に仮設するにしてもそれなりの工事が必要だ。
当然、お金もかかる。
これは現状では遣り様がないな。
最悪、切羽詰まったお客さんは住居のトイレにでも案内するしかない。
いない事を祈りましょう。
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