第75話 下拵え
店に入るとそのままトイレ横に設置された洗面台に行ってしっかりと手洗いをする。使う石鹸は昔からのお気に入りの液体石鹼だ。スクラブ配合で油汚れに強く汚れが良く落ちる。匂いもいい。
最初の頃は暇な時間はバイク弄れるかなとか思ってたけど直ぐに考えが甘かったと気付かされた。
機械を弄るとどうしても油の汚れと匂いが付いてしまうのだ。それで調理をするのはヒジョーに宜しくない。味はともかく衛生面だけでも問題がありすぎだった。
今日のは自分のじゃないし勘弁して下さい。
手洗いを終えて外の様子を窺うがいつものようにお客さんが来る気配はない。
ホントに昼だけ営業に変えてしまった方がいいのではと思ってしまう。
決して自分がバイクや車を弄りたいからとかじゃないぞ。
何しろ俺の場合、毎日の通勤がほぼツーリングだからな。
フッフッフ、こればかりは田舎の圧勝だな。
一体誰に対して何のためなのか全く謎なマウントだな。
しかもデメリットの方がはるかにデカいのは忘れてくれ。
さて、平和なうちに明日の仕込みでも済ませてしまおう。
もちろんキャンプの分も一緒に。
保存や持ち運びを考えなくていいのはとっても楽だ。
前もって準備して冷蔵庫に入れておくだけだもの。
先週と同じくらい混んだとしても木島さんもいることだし三音里ちゃん達は早めに上がってもらえるだろう。
それから庭にテントを設営して火起こしをしてもらっても陽が落ちる前には十分間に合うはずだ。
店の方は客足を見ながらだけどいつも通りなら18時で閉店かな。
仕事が終わったら秒で焚火が楽しめるのか。そしてそこに待っているのは冷えたビールと美味い飯。何だそれ。何処の天国だよ。
準備と言っても大したことをする訳じゃない。具材を切って串に挿してタッパーに入れて冷蔵庫に保管するだけ。あとは卵茹でるくらいか。
三音里ちゃんにやりたいことを聞いたらBBQ&焼肉と返事が返って来た。さすが育ち盛り。肉が正義なんだな。これが肉食女子か。(違います)
用意した肉はBBQ用のブロック肉に焼き肉用のカット肉。そしてオマケは分厚いステーキ肉だ。
特製ソーセージの製造をお願いしているブッチャーズ・ミートさんに別注で手配をお願いした。店名が肉屋の肉ってどんだけ肉好きなんだよ。でも店長さんは海老名さん。魚介も生は苦手だけど焼くと美味いんだよな。
キャンツーなら保存や運搬で悩むところだが今回は考えなくていいので好きなだけ揃えられる。何という幸せ。
調子に乗って買い過ぎた気がするけど三音里ちゃんと翼ちゃんに頑張ってもらおう。ダイエットなんかしてないだろうし。(かなり失礼)
本場のBBQは一晩かけてバカでかい塊肉をじっくり焼いたりするらしいけどさすがにそこまで拘れないので炭火グリルを使った焼肉パーティーだな。
グリルは家の物置にしまい込まれていて錆の浮いたデカくて重い奴を発掘しました。持ち運びには全く向いてないけど脚が継ぎ足し式で立っても座っても使えそうなのは使い勝手は良さそう。鉄板は更に重かった。バイクじゃ絶対無理。
使う肉も予算の都合でA5ランクの高級和牛とはいかないのでちょっとひと手間。
カット肉の部位はカルビとロースとハラミ。ハラミは厳密にはホルモンらしいけどどう見ても赤身肉だろう。ホルモンは好きじゃない俺だけど美味けりゃ問題なし。
半分は焼く前に塩コショウを振って肉の味を堪能する予定だが半分は市販のタレにゴマ油とおろしにんにくを混ぜた物を揉み込みじっくり一晩漬ける。濃い味好きの俺としてはこっちが本命かな。(子供舌)
ステーキ肉は筋を切るついでにちょっと切り込みを入れてから裏表をまんべんなくフォークで刺して肉の繊維を断ち切っておく。切り込みは入れすぎると焼いたときに肉汁が逃げてしまうので要注意。後は焼く前にしっかり常温に戻してから塩コショウを振って焼くだけだ。
どれも想像するだけで白米が欲しくなる。
後は燻製用の食材だけど準備が必要なのはゆで卵くらいだ。他に予定しているのはチーズにソーセージ、ミックスナッツ辺りの王道だから袋を開けるだけだ。変わり者としてはバナナかな。
食材を探していたらふと目に留まったので試してみる事にした。
「ウィスキーの様な香りで味わい深く美味しい」と言う人もいれば「これは食えない。大失敗」や「溶けて消えました」なんて報告もあるのでちょっと楽しみだ。
材料の値段も手ごろだし失敗作なら笑い話のネタが増えるだけだ。
三音里ちゃん達の渋い顔を見るのも楽しそうでしょ。(極悪人)
ソーセージは店のが旨すぎるんであんまり期待していない。既に燻されている市販の粗挽きソーセージを更に燻製したらどうなるんだろうという興味だけです。
魚介を入れてみようかとも思ったけど生臭さが移るかもしれないので今回はご遠慮願った。やるなら別の箱を使いたい。次回のお楽しみだ。次回未定だけど。
さて、明日も頑張ろう。美味いビールが待ってるぞ。(呑兵衛)
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