第63話 ある朝の光景

 百均でカゴ一杯のお買い物を楽しんだら次はホームセンターへ。実際はカゴが二つだったけど。ちゃんと私物は別会計ですよ。レシート分けとかないと後が面倒そうでしょ。


 買い物の予定はコンプリートできたのでホームセンターは寄らなくても良かったんだけどせっかく街まで出てきたからついでです。そんな調子なので趣味メインで工具コーナーとアウトドアコーナー中心にウロチョロと物色する。


 工具コーナーでエアコンプレッサーに涎を垂らしながら断腸の思いで諦め(毎回恒例)、鵞鳥のチェーン調整の為に22mmのソケットを購入。思い出したようにカー用品コーナーに回ってチョロQ用のオイルエレメント、ポイパック、ワイパーゴムをカゴにIN。鵞鳥のエレメントは家に帰ってから密林さんだな。


 うーん、やっぱり楽しむためには色々とお金がかかる。地獄の沙汰も金次第。ちょっと違うか。無駄遣いとか言ってはいけません。禁句です。


 荷物で一杯になったチョロQのドライビングシートより小さなナビシートを見ながら財布は軽くなったが相応の満足感は得られたと思いましょう。


 後は…。ああそうだ週末用の食材を仕入れておこう。今回は荷物を気にしなくていいからいつものキャンプじゃできない事をやってみよう。


 てなわけで次はスーパーに寄って食材を買い込んで本日の買い出しは終了と相成りました。


 せっかく街まで出て来たんでマスターのお見舞いに拠りたいところだけど今は感染予防対策としてお見舞いも制限されていて登録した四人までしか面会できないらしい。まあ三音里ちゃん母の話では容態は落ち着いていて全く問題ないようだからそんなに心配もしてない。


 食材も買い込んだので家に帰る前に店に拠って荷物を下ろす。食品だけ冷蔵庫に入れて他の整理は明日でいいでしょ。ふと時計を見ると普段の閉店時間と大差ない時間になっている。さあ帰ろ、帰ろ。今日は寒かったからゆっくり風呂に浸かりたい。





 朝目覚めると雨は止んでいた。そして抜けるような青空。空気中の塵が雨と一緒に落ちたのか雲一つない空から山の緑を照らす朝日がいつもより眩しい。


 ん〜、いい天気だ。


 部屋を出た廊下の窓から外の景色を眺めながら大きく伸びをしてから台所へと向かうと食卓の上にはハムエッグがラップを被せられチョコンと載っていた。


 両親は半農半サラといった感じなのでどちらかが家に居る事も多いのだが、今日は二人とも既に家を出たようだ。


 壁に掛けられた時計を見ると八時を回っている。そりゃ普通の人はもう動いてるよな。俺だって務めてる時ならとっくに家を出ている時間だ。


 リモコンでテレビを点けてから昨夜の残りの味噌汁を火にかけ温めてからご飯を茶碗に盛る。おっと、電気ポットのスイッチも忘れずに押しとかないと。コーヒーメーカーは出張中なので今日はインスタントだな。


『朝からこんな情報誰得なの?』な芸能ニュースを垂れ流しているテレビの音を聞き流しながら朝飯を済ませると時計の針は八時半を回っていた。


 使った食器と空になった味噌汁の鍋を洗って水切りに置いて、沸かし直した電気ポットのお湯で愛用のマグカップにインスタントコーヒーを満たしてから着替えの為に部屋への階段を上る。


 今日は天気がいいから昼間は温かくなりそうだが朝晩はめっきり涼しくなってきたので白無地クルーネックの長袖のTシャツの上にカーキ色の薄手のミリタリーシャツを羽織った。Gパンは昨日変えたから今日も同じ物。昨日は車移動だったしそんなに汚れてもいないでしょ。これでも調理するようになってからは小まめに洗濯してるんだよ。以前なら特別汚れなければ一週間は平気で穿いてたんだから。


 着替え終わったらベッドに腰かけコーヒーを飲みながら一服。


 何とゆっくりとした朝なのだろうと天井へと昇っていく煙を見ながら改めて今の境遇に想いを馳せる。


 確固たる目標もなく仕事を辞める時には不安だらけだったのにあれよあれよとロクに考えもせずにいたらいつの間にか喫茶店のマスターをやる事になるとは。


 しかもこれが性に合っていたのか楽しい。

 初めてのことも多くて大変な時もあるけど面白い。


 まあ期間限定だし経営を考える必要がない雇われってのが大きいんだろうけどね。何が何でもこれで食っていくぞという重い考えもないから売り上げのノルマなんか課せられたら途端に嫌になりそうだ。


『自分で何かを』とか言いながら結局雇われてるんだからあんまり変りが無いような気もするけど。


 でもそれでもいいさ。何事も経験だ。それが楽しいと感じられるならやる意味は在るはずとポジティブシンキングで行きましょう。


 煙草をもみ消しコーヒーを飲み干してからすっかりヘビロテなライダースジャケットを手に取り玄関へ。


 グローブを突っ込んだままのヘルメットを手に取ったら戸締りをして車庫に鎮座する青い車体へと歩みを進める。タンクに残った昨日の雨の雫が朝日で煌く。


 格好良さげに見たままの感想を述べてみたが要は雨曝し。ちゃんとカバーくらいはかけないとな。ごめんなさい。反省。


 さあ、今日も鵞鳥と一緒に一日を始めよう。







―・―・―・―・―


2022年も終わりですね。


素人の駄文にお付き合い頂きありがとうございました。


2023年も皆さまにとって良い年でありますように。



 

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