第34話 立つ鳥
食後は日陰でまったりと世間話。
といってもオッサンが今時の女子高生の話に付いて行けるはずもなく俺の昔話が中心だ。バイクの話とかキャンプの話とか。付き合ってくれてありがとう。
世代を超えた楽しいお喋りも一段落したら後片付けだ。
まずは食器。炊事場があるなら軽く洗うくらいするが残念ながら今日の河原にはない。ちょっと離れたところに公衆便所があるだけだ。川で洗っちゃう人もいるけど洗剤とか油とかそれ生活排水ですから。俺はそんな時はウェツトティッシュで軽く拭くだけ。どうせ帰ってからもう一度洗うんだから日帰りや一泊ならこれで十分。
次は焚火台。コイツは薪の燃え具合もあるから早めに準備する。今日は鍋を掛けたあとは薪を焼べてないからいい感じに灰と燃えカスになってきている。薪が自然由来の材料だから埋めておけば自然に還りそうな物なんだけどそうは問屋が卸さない。灰は強アルカリ性で場合によっては土に良くないし、炭は生分解されないからそのままずっと残ってしまう。結論、専用のゴミ箱が置かれて無ければ持って帰りましょうという事だ。
形のある薪は少し崩してバケツの水に少し浸けて置く。灰は広げて熱を奪ってから防炎の消火袋へと入れる。周りを軽く掃いて落ちた灰を集めるのは気分の問題です。
最後にタープとテントを畳んで終了。
道具を並べてバッグに仕舞いながらパッキングのコツとかをレクチャーしてみる。バックの形が崩れないように長さのある物を上手く使うとか使う順番を考えて詰めていくだとかのあくまで俺流なんで正解かどうかは知らん。
そして最後はバイクの向きを変えてから荷物をしっかり固定して終了。もちろん使った場所の確認も。小物の忘れ物とか結構あったりするし、原状復帰の確認も忘れないように。穴掘ったり石詰んだりしたらそれをできるだけ元の状態に戻す。自分が使った痕跡を出来るだけ残さないようにするのが理想だと思っている私です。
「忘れ物はないかな?じゃあこの先のドライブインの駐車場まで行ってそこで解散にしようか。道は大丈夫だよね」
「「はい」」
「よし、じゃあシュッパーツ」
未舗装路を慎重に進む。オンロードでダート遊びは非常に危険です。(
無事にアスファルトの道に戻ってもすぐにアクセルは開けない。タイヤに着いた泥が落ちるまではアクセルもブレーキも慎重にしないと予想外のとこで滑ります。
十五分程走ると白く大きな看板が見えてくる。ここは昔からその姿を変えることなくそこにある食堂と土産物屋がくっついたドライブイン。混んでるとこなんか見た事もなく何故潰れないのか不思議な店だ。でも田舎には結構あったりする。
車の邪魔にならないように……する必要もないほど空いているので堂々と店の前にバイクを停める。
「バイクの調子は大丈夫そう?」
「はい、ガソリンも大丈夫です。あっ、ちょっとトイレ行ってきていいですか?」
「ああ、そうだね。行ってきた方がいい」
そう言って送り出すと二人は土産物屋の方に入っていった。
河原の公衆便所はやっぱりキツイよね。何か出てきそうだったもん。
煙草を燻らせながらタイヤの溝の泥を穿っていると二人が戻ってきた。
「豊田さんコレ」
「ん、何?」
三音里ちゃんが差し出してきた小さな袋を開けると中にはキーホルダーが一つ。
大きなリングに楕円形の革が付いている。革にはここからかなり距離がある県内の有名観光地の山が描かれていた。いや、ここで売るには無理があるだろう。
「おっ、ありがとう。いいの?」
「今日のお礼です。もっと可愛いのが良かったんですけどあんまり種類が無くて」
いや、オッサンに可愛いのを贈られても困る。
「革も厚くて丈夫そうだ。大事に使うよ。ありがとう」
「へへっ、私達も買っちゃいました。お揃いですね」
そう言って自分達も販売店のキーホルダーを外して付け替えでいる。
「これで私達はチームですね。次は梅雨が明けたらキャンプに行きましょう。それまでに私達も道具を揃えますからまたお願いしますリーダー」
「り、リーダー?」
「はい、リーダーです。隊長とどっちがいいですか?」
「は?じゃあリーダーで」
「はい決定です。次もぜひご指導お願いしますリーダー」
「お、おぅ…」
そんなにニコニコと笑顔で見られても。う〜ん、何かおかしな事になってる。
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