第32話 インチキクッキング
楽し気に道具を眺めている二人は元気いっぱいだ。
「もう料理始めますか?」
「そうだね。煮込みは時間がかかるから先にやっちゃうか。ああ、その前に焚火起こさなきゃ」
「焚火!いよいよですね。頑張ります!」
いやそんなに頑張らなくても大丈夫だから。
いつもはズルして火を着けちゃうけど今日は二人の希望もあってキャンプっぽい火起こしに挑戦だ。
まずは家の近所のお宅から貰って来た薪を割ろう。このお宅は古くて竈を使っている訳ではなく薪ストーブがあるブルジョワな方だ。家の裏山の伐採で出た木をあげたりしてるのでそこそこ仲良くやっている。近所付き合い大切です。
平らな石の上に立てた薪に鉈を押し付けるように食い込ませていく。片手で抑えて勢いよく振り下ろしたりしたら指なくなっちゃうよ。ある程度刃が食い込んだら飛び出している鉈の先端側を別の薪でトントンと叩いて刃を進めていくのが正しいのかもしれないけど俺はペグハンマー使っちゃう。だって持ちやすいんだもん。
鉈がしっかり食い込んで持ち上げても薪が抜けなくなったらそのまま振り上げて石に薪の底を叩きつけてやれば大抵割れる。それを何度か繰り返し十分細くなったらフェザースティックを作る。
これは刃物を使うので慎重にいきたい。初心者は皮手袋してもいいかもしれない。刃を当てる角度と押し込む指の力加減は数を熟して体で覚えるしかない。木の材質によって硬さも違うし。今は肥後守で鉛筆削る事も無いだろうから捨てる割り箸とかで木の削れる感覚を覚えるのもいいかもしれない。
ナイフはモーラのシースナイフとよく分からんチャイナのフォールディングナイフ。フォールディングナイフはネットを覗いたときにデザインが気に入って思わずポチってしまった。安かったんだよ。こうして小物は増えていくので必要のない時は覗かない方がいいと思うのは俺だけだろうか。
〇クトリノックスのマルチツールとかも持ってるけど思った以上に使えません。俺が不器用なだけかね?ホントに緊急時用だね。安くてもちゃちくても専用品の方が役に立つ。
なんちゃってフェザーが出来たら麻紐を解していく。チャ―クロスとかの方がいいかもしれないけど作るのが面倒くさいんです。わざわざ買うのもね。
解した麻紐を焚火台の中央に乗せてファイアースターターで火花を飛ばすと簡単に火が付いた。その上にフェザースティックを乗せてやると削って丸まった木に火が移って大きくなっていく。空気の通り道を塞がないように更に薪を積んだら後は待つだけ。
結構、簡単なんだよね。でも固形燃料や着火剤はもっと簡単だったりする。
焚火の準備が整ったら炊飯準備に移ろう。
と言ってもメスティンに米と水入れるだけ。二人の新品メスティンはシーズニングは済んでいる。米は無洗米だし直ぐに火にかけても炊くことはできるけど、少し水に浸す時間があった方がふっくらと炊き上がる気がする。なので水を入れたらカレーの準備ができるまで放置だ。
調理用の刃物は別に持って来たけど二人とも気にしないというのでさっきのナイフを軽く洗ってそのまま使う事にした。いつもは俺も平気で使いまわす。
俺のカレーの具材は玉葱と肉だけのシンプルな奴だ。サラダ油を引いた鍋でスライスした玉葱を炒めて色が付いてきたら牛でも豚でも切り落としの安い肉を入れて更に炒める。肉の色が変わったら水とカレールーを入れて煮込むだけ。
玉葱を炒める時に軽く塩を振ってやるとちょっと時短できるかも。肉は面倒でも炒める前に一度広げてあげた方が火の通りも良くなって美味しくなる気がする。デカい奴は千切るし、丸まってる奴は延ばす。こんなひと手間が意外と好きです。
最近嵌ってるのは4パック1080円の粉末のカレールーかな。大手メーカー製じゃないけど4〜5人用が1パックでこんな場面で使いやすいのと、スパイスの香りが強く、これにおろしニンニクとバターを入れればコクが段違いだ。ちゃんとチューブ持ってきましたよ。一度冷まさなくてもとろみがつくところも時短で気に入っている。つまりはほとんどルー頼りのインチキなのだが、そこは美味しいから勘弁してもらおう。
二人は普段は全く料理はしないそうだがクッカーを乗せたバーナーの前で楽しそうに料理をしている。炒め終わって水を入れたら薪を動かして火力を調整した焚火台に移動して今度はこちらを放置だ。
水が浸透したであろう頃合いでメスティンを火にかける。ここで登場、ポケットストーブ。上面を左右に開いて中央に固形燃料をセットすれば煮炊きができるという優れものだ。これが330円て凄くない?メスティンは550円だし、どうなってるんだろこの世界。俺が買った時はそこそこいいお値段してたとおもうんだけどなぁ。
くっ、悔しくなんてないからな。(負け惜しみ)
固形燃料に焚火の木っ端で火を着けたらメスティンを乗せて火が消えるまでやる事はありません。ああ、蓋が噴いて外れないようにその辺の石を拾って乗っけるのを忘れないように。
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