第31話 河原にて
『バチン』
「うわっ、危なっ!」
「薪は時々爆ぜるから気を付けてね」
トングで薪を動かしながら注意する。
梅雨前の晴天の土曜日。
今日は近所の河原でキャンプに興味があるというJKコンビに乞われてのデイキャンプ中です。
この河原は夏には水遊びもできるしそれ以外の時期でもバーベキューやキャンプに利用できる地元では知られた場所だ。今日も他に三組ほどの家族連れがテントを張って楽しんでいる。
人数が少ないのは車を停められる場所からちょっと距離があるからかな。でも、バイクならすぐそばまで乗り入れる事が出来る。
「あっ、ちょっと待って。これスタンドの下に敷いといて」
「スタンドの下にですか?」
「そう。運が悪いとスタンドがめり込んで綺麗なカウルが傷物になっちゃうよ」
ヨタヨタと慣れない砂利道を進んできてバイクを降りスタンドを掛けようとする二人に声を掛け、丸い木の板をスタンドの傍に置く。
スタンドが地面にめり込んでバイクが突然倒れるのはキャンツーあるあるだ。キャンプ場でなくてもその昔は真夏の昼にファミレスで飯食って出てきたら熱で柔らかくなったアスファルトにスタンドがめり込んでた事もあった。フルカウルなら倒れれば百パーカウルに傷がつく。運が悪ければ割れるしタンクがへこんだりレバーが折れたり。こんなひと手間でバイクを護れるならやっておいた方がいい。俺はキャンプの時はそこそこの枝を輪切りにしたコースターみたいなのを持ち歩いてる。これなら最悪置き忘れても自然に帰ってくれるからね。家に帰れば材料はその辺に転がってるし。
荷物を降ろしたらまずはタープでも張ってみようか。
タープはありふれたヘキサタイプ。ソロが多いのでそんなに大きな物ではない。
少し風があるからポールは一本でいいかな。風上を低くして風下にポールを立てる。
一人だと面倒で立てない事も多いけど今日は助手が二人もいるから楽勝です。
指示をしながらペグの打ち方や自在金具を使ったロープのテンション調整なんかを教えていく。
俺的にはコツはポールの内側に傾ける角度と全体に皺を出さないテンションの方向だと思う。間違ってたらスマン。
風の影響を受けやすいタープのペグは長めの物で風下と風上は二本打ちする事にしている。あとストレッチコード。備えあれば何とやらだ。
次はテント。今日は泊まらないから必要ないけどJK’sの『組み立ててみたい』との希望があったので持って来た。キャンプをするうえで避けられない作業だから無駄にはなるまい。ついでに他にワンポールやら軍幕やらほかの種類のテントがあることも教えておく。選択肢は多いに越したことはない。悩みも増えるけど。
教材はお気に入りの自立式。広げたグランドシートの上に部材を並べてから組み立てていくのだが、経験が無くても説明する必要がないほど簡単に組み上がっていく。
出来上がったテントを風向きを見ながらペグとガイロープで固定したら完了。座布団代わりのインフレーターマットを放り込んでおく。
二人は早速中に入ってあーでもないこーでもないと言いながらテント内の狭い空間を楽しんでいる。分かる、分かるぞ。この秘密基地感がたまらないんだよな。そんなのはお前だけだという声が聞こえてきそうだがそんな事はないと思いたい。
大物が済んだら次は小物だ。
イスを組み立て、テーブルをセットする。今日は三人なのでちょっと大きめのアルミのロールテーブルも持って来た。別体の脚部に簀子のように丸められる天板を広げて嵌めるだけの簡単な物だけど三人分の料理位は置ける広さがある。
二人はこのデイキャンプが決まってからあのお店で揃いの椅子を買ったそうだ。今日もしっかり小さなタンデムシートに括りつけて持ってきている。造りは俺のとほぼ一緒だ。俺の方が軽いけど。はいそこ、まだ負け惜しみ言ってるとか言わないように。
組み立てたテーブルに調理道具を並べて、最後におニューの焚火台の登場だ。『キャンプと言ったらカレーでしょ』の三音里ちゃんの一言で本日の御昼ご飯はカレーに決定。煮込む料理を作るならと五徳がセットできる焚火台を新調してみた。もちろん薪がそのまま突っ込める奴だ。
細いフレームを広げてペラペラのステンレス鋼の板をセットするだけのものだが五徳の耐荷重が10キロらしいのでそれなりに丈夫である事を期待したい。
ここまで出来たらおじさんはタープの日陰で一休み。
川面を渡る風を感じながらの一服は格別だね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます