第27話 お誘い
『ペコポン』
昼間に干しておいたテントと寝袋を片付けていると充電ケーブルに繋がれたスマホがメッセージの着信を告げた。
画面を見ると予想通りお馴染みのメッセージアプリで連絡が入っていた。
――先日はありがとうございました
急ですが連休に時間空いてたりしますか?
おお、JKから連絡もらってしまった。
発信者はこの前偶々知り合った
アドレス交換なんて社交辞令だと思ってすっかり忘れてた。(若年性健忘 疑)
――暇だよ。全く予定なし
連休とは目の前に迫る黄金週間の事だろう。
期間中はどこ行ってもいつも以上に混んでるから早々にお出かけは諦めて家でごろ寝を決め込もうとしてたんでスケジュールは真っ白です。
『ペコポン』
――買い物に付き合ってもらえませんか?
――別にいいけど何買うの?
――夏用のバイクジャケットが欲しくて。
お店が作業服とかのお店で入りにくいんです。
つーちゃんと相談したら豊田さんなら一緒に行ってくれるかもって
まあそうだわな。
俺みたいなオッサンを今時のJKが欲しがりそうな物があるカワイイ店に連れていかれても困る。
行きたい店は建築現場の作業服や小物をメインにしたガテン系(古い)向けの店だったのだが最近はバイクウェアやキャンプ用品なんかを売り出して話題になってる店だろう。
若杉や高田規模の街ならあってもおかしくない。
近場のバイク屋じゃ種類が少ないしメーカー純正品だったりするからいいお値段の物しかないし、そこそこの規模の専門店となると結構距離がある。
近場で手ごろな値段の商品があるなら見てみたくなるのも頷ける。
俺も見てみたかったし。
――了解
俺も行ってみたかったから丁度いい
いつにする?
――天気が大丈夫なら5月1日のお昼でどうですか
場所はこの前のコンビニの駐車場で
――分かった
最終確認は前日の夜の天気予報確認してからだな
楽しみにしとくよ
――私も楽しみです
また連絡しまーす
楽し気に跳び上がってるスタンプを最後にやり取りは無事に終了した。
俺も夏用のメッシュジャケットとレインウェアは買い直さなきゃと思ってたとこだったので丁度良かった。
後はライディングシューズか。
手持ちの品は何れも10年以上前の物だからそのまま使うのはちょっと抵抗があった。
ちゃんとしたものだから性能的には問題ないと思うけどやっぱりデザインがね。
ゲレンデで10年前のウェア着てたら浮いちゃう感じかな。
合羽の接合部分のシールなんて経年劣化でボロボロになってそうだし。
バイク乗る時は真夏でもTシャツの上に一枚羽織りたいよね。
万が一の時のダメージが全く違うから。
半袖、短パン、サンダル履きのビッグスクーター好きの人とはお友達になれそうもない。
転倒事故の擦過傷で傷口の砂とかゴミを取るデブリードマン処置ってスンゴイ痛いらしいぞ。
傷口をブラシでゴシゴシと。(怖ッ)
安いウィンドブレーカー程度だと逆に溶けて良くないらしいし。
他にもグローブしてなくてクラッチレバーに挟まれた指が飛んだ話とか、道路滑った時に踝削れて無くなっちゃった話とか。
バイク怖っ。
そんなのだからプロテクター入りの革ツナギでも着たいけどさすがに街中うろつけないもんね。
店に入ったら通報されそうだ。
ならばとそれなりの製品でキチンと代用しましょ。
デザインだけでライダース名乗ってるのもあるけど大抵は丈夫な生地で機能性を考えたデザインになってる。
走行中のバタつきを抑えたり袖や背中側がちょっと長目でライディングポジションに合わせて出来てたり。
夏用なら風が通るようにベンチレーターついてたり、べたつき防止で裏地がメッシュだったり、モノによっては全面がメッシュだったりする。
生地も引っ張りに強いケブラー繊維なんかを使ってるから結構丈夫。
作業着なんかにも使われてたみたいだから作業着屋のバイクウェアは意外と期待できるかもしれない。
ふふ〜ん、女子高生とお買い物か。
うん、悪くないかも。
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