第26話 夕焼け
青空の下、新緑の眩しい山道を快調に進んで行く。
鵞鳥はたった33馬力だが軽快に上り坂も進んで行く。
のんびり走るのには十分な性能だ。
強いて難点を挙げるとすればヒラヒラしすぎるとこかな。
車重は160キロ。
軽すぎると言うほど軽くは無いのだがそのお陰か倒し込みや切り返しはとても楽なんだがちょっと敏感過ぎるところがある気がする。
タンデムシートのキャンプ荷物だけで操縦性はかなり変わる。
ガッツリ倒し込んでアクセルを開けると落ち着くのは相変わらずだがリアの荷物だけで感覚がかなり変わる。
バンク角確保の兼ね合いなのか腰高感が否めない。
まあリアに20キロも重し載せたらそりゃ操縦性も変わるわな。
減速も加速も気持ち早めに操作する。
キッチリブレーキングしてから倒し込んでコーナリング中もアクセルを開けていきながらしっかりトラクションを掛けてやるしかないんだけどブレーキショボいしレスポンスついてこないし。
まあ無茶が効かないバイクだからこれはこれで安全で反射神経が衰えたオッサンには向いているのかな。
前の車を追い抜いてやれなんて気が起きないから嫌でも安全運転です。
車のいないとこで九千まで引っ張って繋いでみたけどパワーバンドを感じるようなモリモリ感はありませんでした。
シフトペダル蹴とばして加速しても振動酷くなるだけだし。
こいつは見た目を楽しんで気分に浸りながらトコトコ走るのがいいバイクです。
ホント不思議と言うかアンバランスというか癖のあるバイクだこと。
こういうのが好きでたまらなくなった人が感染者の称号を得るのだろう。
きっとそこまでの道のりは長いんだろう。
そんな事を考えながらのんびりと流しているうちに行き交う車と信号がぼちぼちと増えてストップアンドゴーの間隔が短くなってきた。
現実の世界に還ってきたのだとちょっと寂しい気分になる。
ここからは前後左右に気を配って走らなきゃならない。
旅で一番疲れる時間帯だ。
渋滞にでもハマろうものなら最悪だ。
しばらく遠出はしたくないととまで思ってしまう。
でも忘れてまたすぐ出かけちゃうんだよな。
自分でもホント懲りないと思うよ。
タダの鳥頭なので三歩歩くと忘れます。(呆け爺)
車への注意はもちろんだが都市部では暴走する原チャリやママチャリも侮れない。
奴らは道路交通法を全くと言っていいほど気にしない。
そこの原付君、ヘルメットは首にかけるんじゃなくて頭に被るんだよ。
歩道走って前に行こうとするのもやめようね。
オッサンも咥え煙草は危ないよ。
おばちゃん逆走は危ないから。
前籠に荷物積み過ぎだって。
そこの学生も後ろも見ずに斜行して車線横断したら轢かれちゃうよ。
だ・か・ら、運転中はスマホ弄るなっての!
今でも十分カオスなのにここに電動キックボードなんかが混ざったらもう無法地帯決定でしょ。
怖い怖い、町の道怖い。
早く田舎道に辿り着きたい。
この混雑を抜けて車が減ってくればもうすぐゴールだ。
インナーシールドを下げてテンションは上げて走りましょう。
うむ、これやっぱりカッコイイ。(お気に入り)
順調な道行は夕焼けが遠くの稜線を際立たせ始めた頃に終わりを告げた。
いやー面白かった。
次は何処に行こうかな。(鳥頭発動)
鵞鳥、お前楽しいな。(保菌確定)
今日は軽く洗車するくらいでキャンプ道具の片づけしましょ。
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