第25話 青空
やっぱりツーリングに天気は重要だ。
車ならボンネットで踊る雨粒を見るのも楽しいけどバイクに雨はリスクしかない。
曇るシールド、滑るタイヤ、冷えていく体。
楽しい要素がどこにもない。
ピンロックやABSやTCS、軽くて丈夫なレインウェアと便利な物は増えたけど出来る事なら避けたいものだ。
バイクで泊りがけのツーリングをする時に最も悩ましい所だろう。
快晴の一日目を楽しく過ごして一夜明けたら土砂降りでしたなんてことはバイク乗りなら誰もが経験したことがあるだろう。
出発日が大雨で宿をキャンセルなんてこともよくある話だ。
二日続けて雨が降らない日を選ぶのは正にギャンブルなのだよ。
その点今回の様なキャンツーは気楽なものだ。
予約すら必要ないから前日の天気予報を確認してから動き出せばいいんだから。
正に風の吹くまま気の向くままだ。
当然、立派な露天風呂は無いし豪華なご飯も期待できないけど、一番の目的であるバイクで気持ちよく走る事が叶うんだから俺はそっちを優先します。
それでも豪華ではないけど美味しいご飯は食べられたし温泉だって楽しめる。
そんな訳で最初の目的地は日帰り入浴ができる温泉旅館。
爽やかに晴れ渡った青空の下、近くの温泉宿目指してアクセルを開ける。
辿り着いたのは静かな集落にある一軒の温泉旅館。
ネットに載ってたんで寄ってみた。
何台か他県ナンバーの車があるからお客さんはいるみたいだ。
タンクバッグから用意しておいたお風呂セットを取り出して突撃です。
日帰り入浴とバスタオルを借りて1500円。
これくらいで出先で温泉が楽しめるなら高くはないだろう。
なかなか立派な浴場で小さいけど石造りの露天風呂もある。
たっぷりのお湯の中に揺蕩うと汚れと共に疲れが剥がれ落ちていく。
露天風呂に浸かりながら仰ぎ見る青空。
朝風呂サイコー。
ふー極楽、極楽。(オヤジ完全体)
風呂上がりに冷えたビールといきたいトコだが定番のコーヒー牛乳で我慢。
瓶じゃなくて紙パックなのはちょっと寂しい。
備え付けのドライヤーでしっかりと髪を乾かし、汗が引いたら旅路に戻りましょう。
目的地がある訳じゃないので家の方に向かいながら昨日通らなかった道を選んでゆっくり流す。
さすがにツーリング日和なのですれ違うバイクと挨拶を交わしながら新緑の中を進んで行く。
メジャーなツーリングルートなので先週よりバイクが多い気がする。
天気に誘われてか冬眠明けが増えたかな。
このサイン、最近では『ヤエー』と呼ぶらしい。
『
昔も軽く手を挙げて挨拶する事はたまにあったが名前なんかあったかな?
最近のはエラくオーバーアクションな人が多い気がする。
あんまり派手に動くとふらついて危ないのだが。
バンクしながらは危険行為です。
挨拶を無視するのも悪いのでこちらも軽く返すのだが数が多いのは中々厄介だ。
俺としては一人で黙々と走りたいだけなのだが。
まあ暴走して絡んでくる訳ではないのでそこはお付き合いという事で。
今日の昼飯は蕎麦屋にした。
山に行くと蕎麦屋が多い。
俺の中では蕎麦は痩せた土地でも育つ救荒植物の認識なので名物になるような印象ではないけど山の中には蕎麦屋が多い。
残念ながら俺には蕎麦の違いが分かりません。
十割だとか二八だとか藪だとか更科だとか全く分からないので気にしません。
モノによっては家で茹でた乾麺の方が美味しく感じたりするバカ舌です。
きちんと冷水で締めてやればコシも出て十分美味しいと思うけど。
ラーメンの麺なら多少は違いが分かるんだが。
西山製麺の麺は美味いよね。
結局、蕎麦ってつけ汁の味の差じゃないの?
よく言う江戸っ子のように三分の一だけつけて食べても違いが分かりませんからどっぷりとたっぷりとつけちゃいます。
何ならワサビと刻みネギも最初から全投入です。
違いが分かる人からしたらきっと台無しなんだろうな。
そんな訳で小洒落た拘りがありそうな店は避けて土産物屋を併設してるようなドライブインぽい蕎麦屋にピットイン。
B級好きとしてはやっぱりこっちでしょ。
そして注文したのは
『かつ丼』
散々蕎麦の話してこの仕打ち。
蕎麦じゃ腹持ちがね。…すまん。
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