第22話 設営
雑貨屋の横の道を川沿いに二百メートル程入ったところにキャンプ場はあった。
入り口のいかにも手作りな鳥居のようなゲートを潜り進む。
キャンプ場の敷地は三段で構成されていて、今俺が居るのは真ん中の段。
右手に一段低くなった川の護岸沿いのスペースと、左手に一段高くなった林の中のスペースがあった。
トイレは入口ゲートの横。
水場は中段の入り口寄りで今の俺の場所の隣にある。
上段の林の中に一つと中段の奥に一つテントが見えるので俺は一番下の川沿いにテントを張る事にして右手の砂利道の坂を下り鵞鳥を停めた。
バイクを降りてヘルメットを脱いでから仁王立ちでお決まりの台詞を呟く。
「ここをキャンプ地とする!」
『ドドン!』と太鼓の音が聞こえてきそうだ。
これをやりに来たようなもんだから大満足です。
鵞鳥からドラムバッグを降ろして、まず取り出したのは折り畳みの椅子。
ゴム紐で繋がったフレームを組み立てて座面シートを引っ掛けて固定する。
拘って買ったちょっとお高いヤツだからスポッとハマるような座り心地が気に入っている。
組み立て終わったら座り心地の確認がてら景色を眺めながら一服。
続いてテント予定地にグランドシートを敷いてからその上にテントの部材を並べていく。
テントも簡単でメッシュインナーのループにフレーム二本をクロスするように通してからフレームの端を四隅のリングに嵌めこむだけで殆ど自立している。
何か所かは手でフレームにフックを掛ける必要があるけど超簡単です。
仕上げに防水性の高いフライシートを掛けてこれまた四隅のワンタッチフックにカチリと嵌めるだけ。
良く出来てるなと感心するしかない。
ワンポールテントが人気なのが不思議だ。
今日は風もないのでテントの向きも中からの眺め重視で設置です。
向きが決まったら四隅をペグで固定。
ペグは丈夫なスチール製なので石を気にせずガンガン打ち込みます。
アルミだと地中の石に負けてすぐ曲がる。
ガイロープは横着して省略です。
突風が吹かない事を祈ろう。
前後はフライシートを引っ張って張ると荷物が置けるスペースが出来るので二か所ずつ計四か所をペグで固定すればテント完成。
前面は支柱を立ててガイロープで固定すれば跳ね上げの庇になるんだけど雨は降りそうにないから必要ないだろうとロールアップでまとめちゃいました。
このテント、二・三人用で広さも収納時の大きさも気に入ってるんだけど唯一の残念な点が色。
フライシートが黄緑色なんです。
個人的には好きな色なんだけど虫が寄ってきやすい色なんだそうです。
確かに前回使った時も朝起きた時に他のテントより虫が集ってた気がする。
そんな理由でフライシートには虫よけスプレーをシューっとね。
完成したテントの中にインフレーターマットを広げて放置。
ついでに寝袋も放り込んでおく。
こちらにも虫よけスプレーを一吹き。
外には念のため蚊取り線香を二か所に設置。
まだ季節は早いけど備えあれば何とやらだ。
後はバッグの底板代わりのテーブルをセットしてその上にバーナーとクッカーを並べてから折り畳み式のボックス型ウッドストーブを組み立てて短いペグで固定したスパッタシートに乗せれば終了です。
素人の俺でさえこんなに簡単に出来るんだから各商品のメーカーの努力には頭が下がります。
設営が終わったらちょこっと散策。
長旅で固まった膝や腰を解しながら川に沿ってキャンプ場内を散歩してみる。
キャンプ場の奥にはちょっとした滝があって結構な水音を響かせている。
河原に降りられるので階段を下って水辺へ。
流れる水は透明で冷たい。
水遊びにはちょっと早いかな。
真夏にまた来てみたいものだ。
そこでUターンしてキャンプ場の上段へ。
川沿いの開けた感じとはまた違って豊かに茂った広葉樹の木漏れ日が中々魅力的だ。
そのまま入口付近の階段を下ってトイレを見学。
水洗だし照明は人感センサー使用の立派な物だ。
蜘蛛の巣や枯葉はキャンプ場じゃ避けられないよ。
使っていいと言われた木っ端を水場横の置き場からいくつか頂戴。
近くに製材所があるようでその端材らしい。
木を抱えてテントまで戻った。
木材は芯持ちの角材の端材みたいでそのままだと俺の小さな箱型の焚火台では使えない。
まあ普通の薪でも無理なんでそこはちゃんと準備してます。
その名も『なたとのこ』。まんまです。
これが楽しくもあるのだが結構面倒なんだ。
薪がそのまま焚べられるオープンな焚火台の購入も検討したいところだ。
鉈とペグハンマーを使って三寸角の角材の端材を細くしていく。
薪の準備が整ったらいよいよ着火だ。
焚きつけの枯れ枝やフェザースティックをチマチマ作ってファイヤースターターの火花を飛ばして…。
やりませんけど何か?
『カチャ、シュボ、カチン』
愛用のジッポで固形燃料に火を点けるだけです。
後は燃えてる固形燃料をウッドストーブの中に入れてその上に木材を置くだけ。
『火も起こせないのにキャンプなんかしてんじゃねえよ』とか変なマウントとりにくる方には申し訳ありませんがそんな儀式に全く必要性を感じないタイプです。
大きなポータブル電源まで持ち込んでる人見ると何がしたいんだかとは思うけど。
目的は焚火。
そのための手段に決まり事なんかないでしょ。
それが楽しいと思う人だけがやればいいだけの話。
やるのも自由ならやらないのも自由。
他のキャンパーに迷惑が掛からない範囲で自由に楽しみましょう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます