第12話 峠道
川沿いの国道を一時間ほどのんびりと流すように走ってからダム湖に続く県道に入る。
この先はしばらく上りの峠道が続くが、キチンとセンターラインもある綺麗な道だ。
素敵なワインディングロード?
ただの田舎の峠道ですが何か?
道には所々に黒いスリップマークが刻まれていて小僧共の遊び場になっている事が伺える。
こちとらリハビリ中のリターンライダーだ。
相棒は二十年ぶりにカムバックを果たしたロートルだし、タイヤもおニューでまだ滑りそうなんだから無理はしませんよ。
そうは言っても峠は楽しい。
登りでブレーキも気にしなくていいから少しずつ回転数が上がっていく。
低速コーナーで昔の感覚でイン側に倒し込むとインベタに寄り過ぎて少しヨタヨタしてしまう。倒し込みがとても軽い。
進入スピードが圧倒的に遅いのだ。
久しぶりのライディングに体がビビりまくりだ。
体感速度のズレが酷い。
今日のリハビリメニューはこれだな。
立ち上がりも2ストのパワーバンドの意識でいると圧倒的に
『パァーン』に対して『モモモッ』てな感じ。
せめてマルチの『フォーン』くらいは欲しいとこなのだがリターンライダーにはこれくらいがちょうどいいのかもしれない。
驚いたのは調子に乗って六千回転を超えた時だ。
いや、振動がものすごい事になった。
六千回転までも多少の振動はあったけど『シングルだからねー』で収まるレベルだったのが『これエンジン壊れんじゃね?』レベルに激変した。
振動が酷すぎてミラーなんか見る事も出来んわ。
多少ツキが良くなったような気もするけど車体への負担を心配せずにはいられない。
うん、できるだけ六千以下で走ろう。
コーナーを回っていて感じたのはもう一点。
こいつ思いっ切って倒し込んでやると少し安定するんだけど、なんとなーく曲がろうとするとフラフラ感が酷い。
そのうえコーナリング中のパーシャルの維持が非常に難しい。
アクセルワークがすんごくビミョー。
丁度いいとこが滅茶苦茶狭い気がする。
トルクの出方が雑というか乱暴というか。
マルチなら10段階で調節できそうな所を3、4段階しかない感じでどうしてもギクシャクする。
シングルってこんな感じなの?
GBとかSRも同じなのか?
乗った事が無いから分からん。
何年か前に試乗会で乗ったKTMは同じシングルでももう少しスムーズだった気がするんだが。
そこはキャブとインジェクションの差なのだろうか。
そんなこんなでアクセルワークに苦労してるけどおニューのタイヤはいい感じ。
まだ皮も剥け切ってないだろうけど予想以上にしっかりと食い付く。
立ち上がりでアクセル開けても滑る感じはない。
RX-03とどっちにするか悩んだんだけど耐久性重視で02にして正解かな。
性能は十分そうだ。
フロントは下りで様子見ないと何ともだけど倒立フォークが硬すぎる気がする。
キャスター角に慣れてないだけなのかちょっと変な感じ。
バネレート変えた方がいいのかな。
とりあえずエア少し落としてみるか。
そんな感じでバイクの乗り方を思い出しているうちに目的地に到着。
管理事務所の隣にある公園の駐車場にピットイン。
いやー手も痺れて肩も凝ったけど尻が一番酷い。
このシート、見た目通りクッション性ゼロ。
尻の形が変わっちゃいそうなくらい硬いです。
体を捻ってほぐしながらリアタイヤを見るとまだ端から1センチ以上残ってる。
まあ回転数抑えてスピード出してないからこんなもんか。
昔は端まで使い切る事に必死になっていたのが懐かしい。
体が怖がって変な筋肉に力が入ってるから肩から腰に掛けて硬くなってる。
下りはもう少し楽な感じで行ってみましょう。
煙草を一服してから今来た道をゆっくりと下る。
全開じゃないからブレーキも十分な仕事をしている。
でもやっぱりチープだからホースくらいメッシュに変えたいな。
感覚のズレの原因は多分シフトダウン後のエンジンブレーキだな。
2ストの時はほぼ無視してたからアクセル開くタイミングがズレてる感じかな。
意識して減速しないとアクセルを開けられないコーナリング中にスピードが落ちすぎてインに寄り過ぎてしまってるみたいだ。
コーナーリング中のアクセル開度をもう少し調整してエンブレを抑える必要があるのかも。
あのギクシャク感でできるのかな。ちょっと不安。
スロットル系は帰ったら再整備だな。
そんな事を考えながら無茶はせずに下り終了。
そのままUターンして再び登りへ。
コーナリング中のアクセルを注意しながら走ると少しはマシになった気がする。
シート位置もできるだけ後ろにしてリアタイヤに乗っかるイメージ。
そうそう、昔はアウト側のステップを踏ん張ってタンクを膝で抑えながらイン側の肩を入れる感じで体をズラして曲がってたのも思い出したらコーナリング中の姿勢が落ち着いて楽に曲がれるようになってきた。
うん、いいんじゃないかな。
十分楽しめそうだ。
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