第2話 おいおい、俺の自由の邪魔すんじゃねぇよ
「あん? こんな低高度に
シュタルヴィント改の寝ぼけたエンジンを叩き起こし、
見た感じまんまなデケェ鳥とか明らかに飛行に適してない虎とか、まぁいろんなもんがいる。見た目の共通点は、「空を飛べるし飛んでいる」――それ以外は、一切
で、この
だからこそ、俺の乗ってるシュタルヴィント改のようなアドシアが、“対
重要なのは、なんでたかだか100mにまで降りてきたんだってワケだ。
普通、一番低い高度でも1,000m以下には
「うおっ!」
なんて言ってるヒマもなく、俺は目の前に迫る鳥型
俺以外ならぶつかってたぞ、これ。
「つーか、どれだけいやがる!?」
たまに
今の数は、百は余裕でいる。どう考えても普通じゃなかった。
「おいおい……。せっかく風呂入ろうとしてんのに、邪魔すんじゃねーよ!」
腹が立った俺は、憂さ晴らしもかねてこいつらを討伐することに決めた。元々人類の敵扱いされてんだ、何の
それに……俺の勘が、“放っておいたらここいら一帯が壊滅する”ってしつけぇんだ。
どうにも、こういうのは見過ごせねぇんだよな。
そう思ってると、俺のシュタルヴィント改に
だが。
「上等ッ! 全部たたっ斬る!」
俺は双剣をシュタルヴィント改に抜かせ、
鍛えに鍛えた双天一真流の剣技は、この程度の数などものともしなかった。あいつらの攻撃は全部外れ、逆にこっちはすれ違うたびに、
「ザコばかりだな……準備運動にもならねぇ」
まとわりついてきた
が、斬っても斬っても敵が湧きだす。俺に向かってくる個体は減ってきたが、総数はまるで減った気がしなかった。
「どれだけいるんだ? まったく……」
機体に搭載されたエンジンの出力を上げ、さらに迫る
“
それを知ると同時に、俺は一つの仮説を思い浮かべる。
「何か変な奴でも来たのか?」
変な奴。
ザコばかりの低高度にはいないような、場違いな強さを持つ
俺が学生時代に見てきた
なぁんて考え事をしながら
「あん? アークィスか?」
アークィス。俺がいるヴェルセア王国の、正規軍のアドシアだ。
このシュタルヴィント改――のオリジナルなシュタルヴィントよりちょっと
なんて考えてると、通信が繋がる。
『そこの黒いシュタルヴィント、無事か!?』
「こっちは平気だよ。それより、まだそこいらじゅうにいるぞ、
言いながら俺は、シュタルヴィント改が左手に持ってる剣をしまわせ、代わりにマシンガンを取り出す。バカみてぇな弾数を詰めたシロモノだが、
警戒されて近寄ってこなくなったのか。あいつらにもその程度の知恵はあるみてぇだが、だからって見逃すほど俺は甘くねぇ。
連射モードにしてぶっぱなした、そのとき。
『うわああぁっ!?』
アークィスから悲鳴が響いた。同時に、青いシグナルの一つが消滅する。
「おい、どうした!?」
『あ、あれを見ろ……!』
何があったか、アークィスに乗った正規兵はアドシアで上を指さす。
そこには――
「おいおい……!」
あの姿を見て、俺は前世の神話を思い出していた。
だが、あれは騎士学校で、幼馴染と一緒に見た覚えがある。初めて見たときは、ヤマタノオロチのパチモンかよとふざけて笑ってたな。
だが、あれは。
この辺の高度には出てこないはずの、
俺の機体じゃ、勝てるかどうか怪しい強さを持つ
そんな黄土色の竜は、俺たちをひと目睨むと大口を開ける。
「ッ、まずい!」
この角度だと、味方や市街地にまず間違いなく命中する。
俺はシュタルヴィント改に載せられた、
同時にブースターも限界まで吹かし、瞬く間に
「てめぇの敵は、こっちだ!」
言いつつ、俺は手持ちのマシンガンの全弾をヤツの目に集中させる。
まさかこの程度で仕留められるとは思えない――が、200m以上の距離を取っている以上、こっちもすぐには仕留められない。ヤツの伸びる首の範囲外だからな。
必然、ヤツも遠距離攻撃に移る。
だが、
予想通り、ヤツも
「これなら――ッ!」
時間を稼げると思ったのもつかの間、別の
怯えの気配がしたのですぐに斬り伏せたが、その分反応が遅れちまった。
「あ……まずいな、これ」
俺の勘が、「撃墜される」と警鐘を鳴らしてやがった。
だが、いくらなんでもシュタルヴィント改と運命をともにするつもりはねぇ。こいつは俺の相棒だが、死ぬには40という年齢は早すぎた。
最後の悪あがきで、俺は全力で機体を左に進ませる。
推力が俺たちを押すのを感じていると、
目を奪わんとする怨敵を押し潰す――だが、俺が一歩早かったな。
シュタルヴィント改の右腕と両脚が奪われたのをモニターで見つつ、俺はコクピットに備え付けられた脱出ボタンを押す。
今なら、俺は捨て置かれるだろう。それに、シュタルヴィント改の性能じゃ、剣一本あったところでヤツのエサになるだけだ。
『各機、
俺はアークィスの兵士の声を聞く。まったく、俺の意図に気づいてくれて助かったぜ。ここはしばらく、あんたらに任せるかな。
激烈な衝撃を、そして落下の重力をも受けながら、俺は遠ざかっていくシュタルヴィント改の背中を見ていた。
「
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます