第27話【ほろほろ】

 巷では欧州のイメージを着想の源としたティータイムが流行っているらしいと耳にした。そういうのは、多種多様なスイーツを準備する必要があるため、必然的に多人数向けのものが多くなるようだが、たまたまおひとりさま向けというものを見かけた。先に運ばれてきたお冷をちまちまと口にしつつ待つことしばし、ぼくの目の前に現れたのは小さなお皿を三段に重ねたティーセットだった。上段は一口サイズのチョコレート、くるみの乗ったマドレーヌ、チェッカークッキーが数枚。中段にはパンナコッタ、直径数センチのブルーベリーのタルト、スノーボール。下段にはサンドイッチが三種類。こういうセットでは、いくつか塩気のきいたものが入っているのが定石だと聞いたが、食べ始めて見ると確かに、たまに塩気のものを食べたくなる。共に供された紅茶では間に合わないのだ。おあつらえ向きに、サンドイッチはツナとハムとチーズの三種にレタスやピクルスを添えたものだった。もちろんスイーツも美味しい。チョコレートは珈琲味なのか、苦みのきいたガナッシュが口の中でとろける。マドレーヌはくるみの香りがふわふわの生地とよくマッチしている。チェッカークッキーは焼き立てなのかさくさくと軽い口当たりにバターがきいていた。パンナコッタはバニラ味とマンゴーのソースがよく絡み、ブルーベリーのタルトはベリーとタルト生地の間のカスタードクリームがベリーの酸っぱさとタルト生地の香ばしさを取り持っている。スノーボールはアーモンドプードルがふんだんに使われているのか、口の中でほろほろと崩れ、名前の通り粉雪のように消えていくようだった。時折サンドイッチを口にしつつあっと言う間に食べてしまい、なるほどこれは巷で流行るはずだとぼくは一人で大きくうなずいたのだった。

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