第17話【流星群】
雨が好きだという人が羨ましかった。ぼくは、雨の日は体調が悪くなる。頭が痛かったり体が重かったりする。何かと億劫になる。アンニュイになりたくても、体調がそれを許さない。体調の悪さは物憂げとかいう可愛い程度では済まされないのだ。そんなことを思いながら、ぼくは夜の道を歩いていた。
コンビニで仕入れたビニール傘はいかにも安っぽく、骨がビニールの縫い目と微妙にずれているし、柄の部分もなんとなく頼りない。そう思いながら、ふと街灯の下で見上げた空に、ぼくは流星群を見た。
雨雲の厚さが、そこだけなくなったのかと思った。けれど、眩しい街灯の上は相変わらずどんよりと暗い。降り注ぐ流れ星が光を帯びた雨粒だとすぐに分かっても、ぼくはそれを流星群だと思うことにした。だって、その方が幸せだから。流れ星はぼくの持つビニール傘の天球に当たり、ぱらぱらと音を立てる。次の流れ星が、次々とぼくの上に降り注ぐ。ぼくだけの流星群だ。いま、ここだけにしかない流れ星たちが、足を止めたぼくの周りに垂れ落ちていく。真っ黒な地面に着地する前に、光を次の星たちに託すようにして消えていく。この流星群が止むまで、ここに立っていようか。願い事はなにもないけれど、ただ、ぼくだけの星たちを、なんとなく独り占めしていたい気分だから。
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