第15話【おやつ】

 昔ながらの駄菓子屋さんが減ったからか、こまごまとした菓子が陳列されているのを見ると、足を止めて吟味してしまう。風船ガムやこんぺいとう、一本入りのスティック状のスナック菓子、小さなジャーキー、魚肉を練って平たく伸ばしたものに味を付けた太郎何某。一つ一つの包みは小さく、価格も二桁程度。だからついついあれもこれもとプラスチックの籠に放り込む。なんだったか、おやつは一人三百円までだっけ……ふと値札を見て、暗算で合計金額を出してみようとする。あれ、これ数えたっけ。何しろどれも似たような値段だから忘れてしまう。最初からやり直し。そもそも三百円に収める必要はないのだけれど、なんとなく「三百円分のおやつ」を味わってみたくなったのだ。

 ようやく計算を終えて、三百円以内に収めたお菓子の籠を会計に持っていく。雑多ともいえる小さなお菓子たちが、透明のビニール袋に詰められる。こぼれ落ちないように口をテープで留められた袋は、宝物を詰めたもののようにどこか心躍るもののようだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る