第4話【紙飛行機】
明け方に降った雨は、日が昇り切るころには止んでいた。雲間から差す太陽の光は穏やかで、黒く湿ったアスファルトの地面をゆっくりと乾かしていた。ぼくが歩く道の片側には学校らしき建物があって、授業の合間なのかざわめきが聞こえてきた。桜の赤や黄色の葉が散って歩道の片側に積もる中、ふと白いものを見つけた。
それは紙飛行機の残骸だった。雨に濡れて、泥が跳ねていたけれど、折り目はしっかりとつけられて辛うじて紙飛行機としての形を保っていた。広げたら破れてしまいそうだから、ぼくは道端に屈みこんでまじまじと見た。テスト用紙らしい、いくつか問題が書かれている。国語のようだ。「この時の作者の考えを述べよ」。
鉛筆で何か書かれた跡があったが、ふやけた紙でもう読み取れなくなってしまっていた。それよりも、その上に打たれた赤いバツ印の方が滲まず消えず、目立っていた。点数が悪かったから紙飛行機にしたのだろうか。作者の考えなんて、作者以外分かるはずもないよね。ぼくは回答者にとりあえずの同情の言葉を送ったが、ぼくだって回答者の考えは分からない。せっかく遠くまで飛ぼうと思ったのに、ろくに飛べずに落ちて雨に打たれたということだけを、その紙飛行機は語っていた。
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